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There’s a followup interview in the same book with Akiko Shikata, the text of which can be seen here.

まずは『うみねこのなく頃に』(以下『うみねこ』)制作までの経緯についてお聞かせ下さい。

竜騎士07:『ひぐらしのなく頃に』(以下『ひぐらし』)は、「礼」で終わることが決まっていたのでずが、それでモノ作りの情熱が尽きるわけではなく、すぐ次の作品を作りたいという強い思いを持っていました。なので『うみねこ』の構想は、『ひぐらし』の制作が終わりかけていた頃から少しずつ水面下で考えていました。大体今から1年くらい前……『祭囃し編』を作っている頃ですね。

シナリオはいつ頃から書き始めていたのですか?

竜騎士07:プロットから考えると半年以上前ですが、実際の執筆そのものは、コミックマケットの3カ月から4カ月前です。それからのスクリプト制作期間はいつもなら4週間くらいなのですが、今回の『うみねこ』は第1作目で、システム周りから何から全部作らなければいけなかったので、6週間取っていまして。シナリオの着手時期も早くなりました。それはスタッフ全員同じで、スクリプト系のメインをやっている八咫桜さんも、システム周りについて試行錯誤を始めるのが早かったし、BTさんも早くからシステム作りに入っていました。BTさんの役割として大きかったのは、作業環境の再構築を見直してくれたことですね。

例えばどんなことを?

竜騎士07:昔は複数人でパソコン使って仕事しているのに、LANを導入していなかったんです。外付けハードディスクを皆で移して回って、データのやりとりをする—そんな状況だったんです。おかしいと思うかもしれませんが、当時はLANがなかったもので。それをBTさんが「LANがないとダメだよ!」って言って、LANを引いたんです。あとは中身が雑然としたハードディスクを整理整頓したり、ファイルネームに規則性を持たせたり、資料をぺーパー化したり……。ベテランの人間だけでなく、スタッフ全員が共通理解できるような、いわゆる作業環境の合理化を図ってもらいました。今回『うみねこ』の作業期間が6週間で済んだのも、彼のおかげという気がしますね。

BTさんは、進行管理なども担当されていたのですか?

BT:そこまではやっていません。環境整理と、あと存在そのものが修羅場のモチベーション維持に役立ったとは思いますが。

竜騎士07:スタッフ間が明るい関係になるよう、道化を演じてくれました。

BT:道化じゃないよ!(笑)

ゲームの制作期間中は、ずっと泊まり込みですか?

竜騎士07:そうですね。楽しい1カ月半でした。

合宿のような感じですね。

竜騎士07:ええ、楽しいですよ。だって、1つのことに集中できるんですから。

八咫桜:最初の3、4週間はそうでもなかったよ(笑)。

BT:だんだん、調子がハイになってくるんですよね。馬鹿やってもいいんだ、って感じになると、テンションが上がってくる。

竜騎士07:一番良くないのは、3週間ぐらい経ったあとにテンションが上がりきって、危機感がなくなることですね(笑)。最初のうちはリラックスになるから良いんだけど、後半に入るとリラックスしすぎちゃって、モチベーションがちっとも上がってこない。なので、逆に危機感を煽るっていう鼓舞の仕方が多かったですね。

その役割を果たしたのは?

竜騎士07:焦らせるのは私が多いですね。私はいつもすべての仕事を「早回しにやろう、早回しにやろう。早回しにやったってどうせ2日遅れる」という考えなので。ただリラックスは必要だし、私だけだと職場が寶ギスギスになってしまうので、BTさんが和まし役になってくれました。

BT:そのへんのバランスは大事ですね。あと、マスターアップの1週間から2週間前は、カレンダーにxをつけ始めましたね。

竜騎士07:危機感を煽ろうと始めたんです。あの頃はダレきって、精神・肉体共に疲れが来ていたので。‥‥‥まあ、5年の修羅場を共にしてきた仲間たちなので、最初の1週間より最後の1週間の方が阿鼻叫喚であることは誰だってわかっているんですが。でも長い間修羅場にいすぎると、頭がほんわかしちゃいますね(笑)。

某尻尾娘の登場秘話とシステムの改良について

泊まり込みの最中、お勤めになっている方はどうされるんですか?

竜騎士07:八咫桜さんは勤め人をやっているんですが、大変でしたよ。皆が夜中ハイテンションで仕事しているときに「じゃあ俺はもう寝るから」って言うから、「お休み」って返して。明け方に皆が一服しているときにゴロリと起きてきて「じゃあ俺出勤するから」「おお、行ってらっしゃい」ってやりとりしたり。やっぱり勤めと作業、二足のわらじを履くのは楽なことじゃないですよ。

八咫桜:出勤して職場に顔出した瞬間と、帰宅して家のドア開けた瞬間が一番辛いですね。テンションがグルリと反転するので、心は対応できても身体が対応できない。凄く疲れているので、「よし、やるぞ。ういー!」って気合入れてみたり。

竜騎士07:そりゃ疲れるよ(笑)。八咫桜さんに必要だったのは、テンションの切り替えですよね。私自身は(07thExpansionの)リーダーとして「俺が遊べば皆も遊ぶんだよな……」という気持ちがあったので、自らが働いて模範を示さなければ、と思っていました。

自己コントロールされていたんですね。

竜騎士07:でもどのスタッフも自分のやるべき仕事ははっきり分かっているし、食事するたびに「今何やってるの?」「次は〇〇をお願いね」「優先順位をこっちにして」というやりとりをしょっちゅうしていたので、手が空くことはなかったですね。空くのは全行程の末期の末期じゃないかな。その頃になると仕事がピラミッドのてっぺんに近づいてくるので、「〇〇さんの作業が終わらないと、次に移れない」という感じになってきて……。面白いものですね。瞬間的に手が空くことがあるんですよ。だから「1日手空いたから、某尻尾娘の絵描くわ」と言って、ベルンカステルの絵を描いたりして。

そんな誕生秘話が(笑)。続いて、八咫桜さんの作業内容をお聞かせ下さい。

八咫桜:スクリプト全般ですね。今回はゼロからスタートして、竜騎士07さんから「あれをやってみたい」「これできないか」というのを聞いていたので、下地作りのようなことから始めました。その間、BTさんにだいぶお力添え頂いたので、楽でしたね。

BT:システム周りは、八咫桜さんと二人三脚でずっとやりました。八咫桜さんに基礎を固めてもらって、それを発展させたもの……例えばセーブ・ロード画面とか、右クリックシステムとか、アイキャッチの時計などは、私が作りました。

竜騎士07:時計は、物語の結末が近づくと表示位置がずれたり、巨大化したり、効果的に見せるようにしてあるんです。

あれはインパクトありました。

竜騎士07:もう少し効果的な見せ方があったかな……とも思いましたが、調整する時間がなかったのが残念でした。

時計の他にも、今回は『ひぐらし』と比ベて、ゲーム的な演出がかなり強化されていますね。

BT:そうですね。インターフェースというのは、ゲームのやりやすさとかストレスに直結している部分なので、なるべくやっていて気持ちいい形にできれば、と思いました。『ひぐらし』のときにはそこまで手を回すのが難しかった部分があったので、反省点になっていたんです。

事件が発生してから「Characters」をチエツクすると、被害者の損壊部位などが確認できるのは凄いと思いました。

竜騎士07:キャラクターが18人もいるので、プレイヤーは誰が死んだか確認したいだろうし、全員健在だったのがどんどん赤で潰れていくことによって、物語の進捗度を計ることができる。そういう部分を見て欲しかったんです。だから右クリックを多用して欲しかったんですが、人によっては存在すら気づかずに、最後まで行ってしまった方もいるようですね。

BT:テストプレイを行ったときも、右クリックをしない人が多かったですね。セーブしないで、ずっと進めてしまうんです。

竜騎士07:ただ、私も右クリックシステムに頼らなくても進められるよう、配慮はしました。右クリックシステムというのは、おかずみたいなものなんですよね。メインはご飯や味噌汁なんだけど、時々たくあんを食べても良いじゃないかと。使うとより深く楽しめる。そういうシステムにしたいと考えています。

オープニングムービーの挿入も、演出強化の一環なのでしょうか?

竜騎士07:オープニングムービーは、憧れとして以前からやってみたかったんです。また、オープニングムービーをつけるためにはどんな人たちにお願いして、どういう風に進めなければいけないのか、という経験が欲しかったのもありますね。色々なことにトライして経験を身につけたい、という思いがあったので、今何は良い勉強になりましたね。

なるほど。ちなみにシステムは今後、追加される予定などはありまずか?

竜騎士07:物語の表現上、必要があれば入れていくでしようね。あとは技術的な限界もあるので。いくら私が「フルポリゴンの3Dで表現したい」と言っても、できませんからね。

八咫桜:すいません、勘弁して下さい……。

一同:(笑)。

業界騒然間違いナシの新タイトル発表!?

今回、背景の口ケ一ションはどのように行われましたか?

竜騎士07:ひぐらしの『祭囃し編』を制作していた頃には『うみねこ』の世界観がだいぶ見えていたので、その手の所を回って、素材を集めました。

ロケーションは各自別々に行かれたんですか?

竜騎士07:それぞれ狙った場所に行く場合もあるし、常にデジカメを持ち歩いて、行った先で面白い風景があったら、参考に撮影する場合もあります。「何かの参考になるだろう」と思って、常に貪欲に色々なシーンを集めていましたね。何しろ『うみねこ』が最終的にどんな世界観になるのかというのは、私にも分からなかったので……。

八咫桜:撮影は主に、私の役目でしたね。あとはいつもお世話になっている、亀屋万年堂さんという方にもお願いしました。

皆さん、常にデジカメを持ち歩いてらっしゃるのですか?

竜騎士07:そうですね、皆何かあるたびに。家族旅行に行くと、八咫桜さんはずっとカシャカシャやってるんですよ。沖縄に行ったときも、デジカメに数百枚ぐらい画像があって。

八咫桜:しかも、家族一同が揃った記念写真が1枚もないんですよ(笑)。

無人なんですね(笑)。

竜騎士07:そう、家族が1枚も写ってない。ほとんどがロケーションオンリーで人が写ることを良しとしなかったから、お目当ての場所から人が去るまでずっと待っていて。そんなのぱっかりですね。

その中から『うみねこ』に使えそうなものを抜き出されたのですね。

竜騎士07:ええ。その頃は『うみねこ』の世界観はおぼろげだったんですよ。こういう方向の世界観をやりたい、といっても、それでストーリーが確実になるわけではない。まだプロットすらない段階だったので、ありそうな世界観を先読みして搬りました。もう何でも撮りましたね。酷くなると、「これは『うみねこ』ではとても使えないけど、『うみねこ』じゃない作品では参考になるかもしれない」と、そこまで読みきって撮りましたね。

例を挙げると?

景竜騎士07:沖縄だと、「首里城なんか何枚撮っても『うみねこ』では出ないだろうな」と思っていました。でも、『うみねこ』じゃない話を将来書くときには、参考になるかもしれないんですよ。『シーサーのなく頃に』とか。そこでなら、首里城が出てくるかもしれない。

一同:(爆笑)。

竜騎士07:だから、撮影した写真は何に使われるか分からないので、常に撮っています。『うみねこ』の第1話にも色々な風景が出てきますが、あれだって全体で撮っている内の10分の1にも満たないんです。もっと膨大な数を撮っているし、膨大なシーンを用意できる。それでいいんですよ。今回使った『うみねこ』の背景だって、これでベストだと思ってません。より良い背景があったら、こっそり差し替えても良いかなと思っています。

コミックマーケットに対する思いとユーザーへの感想

販売環境についてですが、『ひぐらし』で知名度が高まった今なお、コミックマーケットで販売を続けられる理由はあるのでしょうか。

竜騎士07:私はコミックマーケット出身の、同人の人間ですから。作家をやっているのは、コミックマーケットで作品を発表するためなんです。ショップの委託販売は、コミックマーケットまで足を仲ばせない方のためのもので、あくまで二の次なんですよ。だから、コミケで販売するのは至極当たり前のことです。確かに全体の頒布数を見ればショップの方が多いかもしれないけど、それでもコミックマーケットで他の人に混じって自分の新作を出すというのは、刺激になるんでずよ。もしもお店に納品するだけになったら、よそ様と比べるということをしなくなるので、作品が手抜きになっていくでしようね。コミックマーケットなら、常に他人のビッグな作品に触れ、刺激を得られるので、行くことに意義があるんです。

プレイヤーと生で触れ合うこともできますしね。

竜騎士07:もちろんそれもありますね。ユーザーの皆さんと直接触れ合う唯一の機会でもあるので、それは凄く大きいですね。あと、私たちは島中でやってきたので、普通に「いらっしゃませ、いかがですか?」「ありがとございます」っていう、お祭り感覚が凄い好きなんですよね。

BT:そうですね。コミケの熱気からエネルギーを頂いているような感じですね。

竜騎士07:今は列整理ばかりやらされているけど、売り子の方が楽しいですよね。ついでにいうと、島中が一番楽しい(笑)。

えらい騒ぎになりますよ。

竜騎士07:いや何というか……。

八咫桜:お客さんを呼び止める感覚?

竜騎士07:そうそうそう!商品を見せてお客さんと仲良くなれる。友達になれる。作品に関心のない人を呼び止めて、買ってもらって。次のコミケで「前回面白かったんでまた買いに来ました」って再会できたら、それは凄く嬉しいことで。

そうやって知り合った方々の、『うみねこ』プレイ後の反応はいかがでした?

BT:今回『ひぐらし』とはまったく違う作品だったので、私たちとしてはどんな風に受け入れられるか、発売前は少し心配していました。でも、案外素直に受け入れて頂けたようなので、安心しました。掲示板でも考察で凄く盛り上がっていますし、こうやってユーザーの方々と一緒に楽しんでいけるというのは、作り手としても嬉しいことです。

ゲーム内容に関して、ユーザーの方から要望や意見などは出てきていますか?

竜騎士07:それは尽きないです。人によってそれぞれですね。

ストーリーじゃなく、その他の部分も?

竜騎士07:何をとってもありますよ。「今回はおふざけのシーンがないのでつまらないです」という人がいる一方で、「今回はおふざけのシーンがないので読みやすいのです」という人もいたし。「『ひぐらし』の方が良い」「『うみねこ』の方が良い」というのも、千差万別ですね。

そうですか。竜騎士07さんの製作日記を拝見すると「今回のユーザーは手ごわい」と書かれていましたね。

竜騎士07:『ひぐらし』を経験されて、「こういう風に遊ぶんだ」というのを理解された方が多いんでしょうね。皆さん、非常に発想が柔軟で。叩き上げの軍曹になったという感じですかね。

『ひぐらし』という戦線をくぐりぬけて?

竜騎士07:そういう感じです。皆さん『ひぐらし」の頃はどういう世界なのかよく分からなかったので、遊び方については暗中模索だったと思うんです。それが、今回は『ひぐらし』を経験された叩き上げの方が多いので、よく理解されているんですね。しかも、そういった方々がネットで、今回から入った新兵の方々に「『うみねこ』はかく戦え」というのを伝授しているので、新兵の方のレベルも髙い。そういう意味で、今回は皆手ごわいなと。

裏お茶会で、ベルンカステルも戦い方を教えてくれますしね(笑)。

竜騎士07:そう。だから『うみねこ』って一見攻撃的で挑戦的な作品だけど、システムを冷静に考えてみると随分親切な作品なんですよ。凄い丁寧に「ここを遊ぶ作品」「ここを疑う作品です」って教えてくれるんです。『ひぐらし』の頃にどこを疑うべきかあやふやにしたところがあって、本当はそこを楽しんで欲しかったんですけど、あやふやすぎて迷われていた方が多かった。もうちょっと遊び方を親切に教えるべきだったかなあ……という反省があったので、今回攻撃的ながらも「ここを疑え」と親切に教えてあるんですよ。だから「今回、どうしてそこまで強気なんですか?」とよく言われるんですけど、そんなことはないですよ。逆ですよ。物凄く口やかましい、親切なツンデレですよ。時代はヤンデレなので、もっと酷い作品にしてしまおうかとも思いますけど。それこそ「犯人は誰もいませんよ」ぐらいに。

それは……(笑)。ところで『ひぐらし』で1%だった正解率は、上がりそうですか?

竜騎士07:今回は『ひぐらし』と比べプレイやーの方が増えているので、わかりませんね。ただ私としては、正解率0%が目標です。物語中にも「推理不可能な世界」ってありますよね。解けるように作ってないと、明言しているんです。それでも当てちゃう人はいるから、怖いなあ……っていうと、まるでネット上に答えが出てしいるみたいですけどね(笑)。現状ではそれすら答えられないです。

新たなる設定と引き継いだ試み

設定に関する話ですが、『うみねこ』は孤島や洋館など、ミステリーの王道を行くものになっていますが、これはスタッフ間で話し合った結果、決まったことなのですか?

竜騎士:2作目を作るときは、誰もが皆ジレンマに陥ると思うんですよ。前作を模倣してよく似た作品を作るか、前作とまったく比べようのない道へ進むか。私が考えたのは、『ひぐらし』と同じようなプレイスタイルで、『ひぐらし』と違う世界観でした。「『ひぐらし』でできないことをやろう」と考えた時点で、『ひぐらし』と違う舞台にすることは、はっきりと決めたんですよ。その時点で世界観の設定を考えたときに、安易ですけど「『ひぐらし』は和風だから、今度は洋風にしよう」「(舞台は)今まで山だったんだから、今度は島にしよう」っていう方向性が決まってきました。そうやって考えたら奇しくも『かまいたちの夜』の第1作目と第2作目みたいな関係になっていたので、少し嬉しかったです。……というのは冗談ですが。

一同:(笑)。

竜騎士07:そんな感じで、他の設定も決まっていきました。「脱『ひぐらし』」をしたかったというわけではなくて、『ひぐらし』とは別な物語を拙きたかったので、必然的に『ひぐらし』とは違うものになっていった……という感じです。

舞台は変わりましたが、時代は昭和という同じ年代になっていますよね。これは何か思い入れがあってのことですか?

竜騎士07:本当は「なく頃にシリーズ」ということで、昭和58年で統一したかったんですょ。ところが、ひょんな都合で昭和61年になってしまいまして。

というと?

竜騎士07:新島空港が開港したのが、昭和61年だと判明したんです。それまで「オープニングは飛行機に乗って始まるのがカッコいいな」という思い入れがあったので、そのままだいぶストーリーを作り続けていました。それが、後で調べたらその事実が分かって。昭和58年の設定にしたち、船で六軒島へ行かなくちゃいけない。それではパッとしないなあと思いまして。……別に、フェリーの撮影に行くのが面倒くさかったわけじゃないですょ。

一同:(笑)。

竜騎士07:『ひぐらし』発売から時間が経っているので、『うみねこ』も時問が経っていても良いかな……というのもありましたね。

『ひぐらし』と同時期だったら、ベルンカステルも出てこなかったかもしれませんしね。

竜騎士07:そうですね。若干のズレがあっても、ほぼ同時代にしてあるというのは「なく頃にシリーズ」の世界観というか、私が「ひぐらし」の頃から提唱している、「現実とファンタジーの境目で、キリのいい時間的タイミングが昭和である」という主張に基づいているんです。どうしても、平成19年を舞台にして「人か魔女か?」って言ったら、魔女のわけないんですよ(笑)。昭和末期だから「魔女がいても良いかな?」という気持ちになる。かといって大正・明治までいくと、完全にファンタジーの世界ですしね。

なるほど。魔女や黄金郷も、『うみねこ』は西洋風の設定にしよう、という流れから生まれたのですか?

竜騎士07:『ひぐらし』のとき、本当は「事件を起こしたのは、人か祟りか?」ということをやりたかったんですよ。それが今回の魔女の設定に反映されていて。でも『ひぐらし』ではどうしても『八つ墓村』のように、「村ぐるみの犯罪」という方向にプレイヤーの意識が傾いてしまった。なので、新作は人と祟りの比率を、中間になるようにしたいなと思いました。『ひぐらし』の経験から凶悪に祟り側へ引っ張らないと、祟りのメーターに触れないとよく分かったので、今回、かなり強力に魔女に傾くようにしています。

殺害方法なども、「魔女じゃなきゃできない」ということを強調していますよね。

竜騎士07:ストーリーもそうですね。

『ひぐらし」からの流れでいうと、今回もルールX・Y・Zというのは存在するのでしょうか?

竜騎士07:ルール何かは分かりませんけど、法則は存在しますね。

それが具体的に何かは、お聞きすることはできませんよね……?

竜騎士07:それは『ひぐらし』やった人に「真相を教えて下さい」って言われるようなものじゃないですか(笑)。

すみません(笑)。

明日夢と霧江の意外な正体とは?

今回特徴的なキービジュアルとして、肖像画が登場しますね。アルケミストの江草天仁さんに依頼されたということですが。

竜騎士07:『うみねこ』をやるにあたって、べアトリーチェの肖像画が出てくるっていうのはだいぶ早くから内定していたんですよ。それでそれっぽい絵が描ける人がいないか、当時コンシューマーの『ひぐらし』でお世話になっていたアルケミストのプロデューサーである中川さんに相談したら、「うちの江草がそういうの得意ですよ」とおっしゃられて。江草先生といえば、二頭身で可愛らしいキャラクターを描くというイメージだったのに、あんな素晴らしいシリアスな肖像画も描けるんだという新しい魅力を発見できて、ビックリでした。

素晴らしい出会いですね。設定に関して、参考にされた作品などありますか?

竜騎士07:前回の『ひぐらし』は、『八っ墓村』を参考にしました。物語ではなく、世界観をですね。今度の世界観は江戸川乱歩に近いですね。あとは、横溝正史の『犬神家の一族』とか。今年の新年にテレビドラマがやっていましたが、親類会議の泥臭い雰囲気など、あれは多いに参考になりました。いわゆる遺産系猟奇殺人が大好きな人であればゾクゾクしたと思います。

遺産系猟奇殺人……(笑)。

竜騎士07:死亡フラグが立ちまくりじゃないですか。「誰か死ぬしかないだろこれは」っていう。ミステリーサスぺンスホラーの醍醐味って、そういうフラグ立てだと思うんですよ。

シャワーを浴びると……という奴ですね。

竜騎士07:そうですね。『ひぐらし』は平凡な日常が突然ひっくり返るシチューエーションを楽しむ物語だったけど、『うみねこ』はそうじゃない。「今夜誰かが死ぬしかない」というフラグをたくさん楽しんでもらいたいですね。

なるほど。小説のほかにも竜騎士07さんは『ラグナロクオンライン(以下『RO』)』や『デッドライジング』など、ゲーム好きだと聞いています。お気に入りのゲームの世界観が、作品に影響したりすることは?

竜騎士07:影響は少なくないですね。カッコいいと思うものに出会ったときに、それがなぜカッコいいか、因数分解するんです。その答えが分かれば自分の作品に何か生かせますから。過去にやったゲームで「ここは好きだったんだよなあ」って思った場合も同じです。

『うみねこ』には、『地球防衛軍』のセリフが入っていますよね(笑)。

一同:(爆笑)。

竜騎士07:それは私の悪い癖で、作品を執筆しているその瞬間のマイブームをこっそりオマージュとして文章に混ぜてしまうんですよ。だから日記ですよね。作品をやり返したときに「このときは『地球防衛軍』にはまってたんだな」って分かる(笑)。あの頃は毎日、作業中のBGMとして聞いていたからなあ……。

BT:霧江と明日夢が『RO』のスキルから名づけたっていうのは気づきました?

……あ、そういうことだったのか!(納得)

竜騎士07:そうそう。だから霧江がいると、明日夢が消えちゃうっていう(笑)。名前をつけるときの遊び必というか、ギャグですね。18人もキャラクターがいるので、名前を覚えてもらうにはどうしたら良いだろうかと思って、苦労しました。あと独自な世界観を出したかったというのもあります。太郎とか花子じゃ平凡だけど、「戦人」といったら、『うみねこ』しか思い浮かびませんからね。

キャラクターに関するよもやま話

登場人物を18人という大人数に設定した理由は?

竜騎士07:まずストーリーの軸に沿って、キャラクターを構築していったんです。誰に奥さんがいて、何人兄弟で、子供がいて、使用人がいて……というのを洸い出したら、18人になりました。人数に関しては、ストーリーと一緒に作っていたので、絶えず変動していました。『ひぐらし』のときはヒロインが大勢いて、ギャルゲーのふりをしているけどギャルゲーじゃない、という感じだったんてすが、今回はそうする必要がない。洋館の中こ、メイドが4人も5人もいるような世界観は現実ではありえない。使用人は、絶対年季の入った人がやるに決まってるんですよ。ドジなメイドが何人もいたら困る(笑)。なので、使える執事、使える料理人、使えるフリーアルバイター……と決めていきました。当初は運転手がいても良いかなと考えていたんですが、舞台が島になってからほ必要なくなって……。郷田の原型は、運転手から始まったてす。でもそういうポジションが梢えてしまったので、じゃあ残っているのは料理人かなと。

キャラクターのラフの時点では、全然違うものだったんですね。

竜騎士07:気の向くまま顔を描いていました。イメージから絵を描いたりもしたし、絵を描いたらこんなイメージになった、っていうキゃラもいます。実は最初、夏妃はベアトリーチェのつもりで描いていたんです。でも描いてみたら、どうもベアトリーチェの顔じゃない。血の通った人間の顔をしているので、じゃあ朱志香の母親かな、と。それからもう一度ベアトリーチェを描き直したら意地悪そうな顔ができあがったので、「ベアトリーチェはこっちだな」と確信しました(笑)。

他に描いていて設定が変わったキャラクターはいますか?

竜騎士07:変わったというか、ボツ絵ならいっぱいありますよ。例えば使用人で眞音っていうキャラを描いたんですが、紗音がいるので被るなあと思って。顔絵まで描いたのに、紗音を生かすために眞音を削りました。で、眞音を削るときに、年齢や世代が近いとキャラを殺しあっちゃうから、割烹着の似合うお婆ちゃんなんか良いなということで、最後に生まれたのが熊沢なんです。

一番最初に描かれたのは誰だったんですか?

竜騎士07:戦人で。やっぱり主人公がスタートだろうということで。だいぶ消したり描いたりしたな。主人公を描いた後は誰だったかな……。もう紗音だった気がする(笑)。

一同:(笑)。

竜騎士07:もう男はお腹いっぱいですよ。メイドを気楽に描こうって感じで。その後にベアトリーチェを描いてみたんですけど、苦労人っぽい顔(夏妃)になっちゃって。

頭痛持ちという設定も、絵を見て決められたんですか?

竜騎士07:絵を見てです(笑)。いつも頭痛っぽくて気難しそうだなと思って。朱志香も最初は今の設定にするつもりはありませんでした。本家ご令嬢みたいなイメージで描き上げたら、釣り目で言葉遣いが悪そうなイメージだったんで「じゃあそうしょう」と。

(笑)。譲治に関してはいかがですか?

竜騎士07:譲治は割とすんなり決まりましたわ。「キレイなジャイアン系」といった感じで。最初眼鏡をかけさせたらあまりに當竹すぎたので、外したりしたけど、結周戻しましたね。他にも秀吉や霧江も眼鏡をかけていたのでsが、ありきたりになったのでボッにしました。

譲治はゲームの発売前に「時報時報」言われていましたね。

竜騎士07:彼はカッコよくする必要はなかったんですよね。戦人がカッコいい役担当なので、同じのようなのがいたら殺しあってしまうわけで。キャラクターが18人もいるので、お互いが被らないょうに……というのは気を使いましたね。役割ごとに配役を考えたら、常識的な抑えどころでボケ役の……っていったら、譲治になって。電波もいた方がいいだろうってことで、真里亞ができて。

うんうんうん(笑)。

竜騎士07:大人キャラも被らないようにしたんですが、第1話ではまだ掘り返しが行われていないので、区別できないかもしれませんね。

留弗夫は「ブ〇イトさん」って言われてますけど(笑)。

竜騎士07:おでこのあたりは似てるかもしれないけど(笑)。先入観の問題だと思うんですよね。譲治なんか、絵がなかったら寓竹だと誰も思わないし。「いちいち正論で完全無欠過ぎてムカつく!」みたいな。

八咫桜:BTさんもよく意地悪で、譲治に死ね死ね言ってましたよね(笑)。

BT:紗音に婚約指輪渡すシーンがね……。どうしても「譲治め!!」という気持ちに……。

BTさんのお気に入りは紗音なんですね。

BT:いや、私の好みはやっぱり真里亞ですね。……やっぱりとか言っちゃったよ(笑)。猫っぽい自由奔放な可愛らしさが好きですね。

竜騎士07:(ぼそっと)無い乳、バスト80未満とか……。

BT:いや、それは関係ない。

一同:(笑)。

BT:好きなのは真里亞ですね……。で、ベルンカステル。あ、また言っちゃった(笑)。

(笑)。ユーザー人気でいうと、夏妃の支持が凄いですよね。

BT:そうですね。ちょうど公式ホームべージの方で人気投票が終わったところなんですが、全体で3位でした。

竜騎士07:人間女性キャラでは第1位でしたね。意外だったのは絵羽の順位。可愛くは描いたつもりだけど、多くのユーザーさんは絵羽の良さにはついていけないだろうと思いました。けどそうでもなくて。霧江の人気にもびっくりしましたよ。確かにカッコいいキゃラだけど、出番少なかったのに。次の活躍を期待しているのかな。

チェス盤思考というのが、インパクトがあつたのでは?

BT:確かに、チェス盤思考を気に入ってる方は多いようですね。それと結びつけて霧江さんの人気が上がっているのは間違いない。人気投票のコメント見ると、「ひっくり返して、ひっくり返して!」っていうのが多いし。あと、郷田さんへのコメントで「クロスワード理論で事件解決」っていうのがありました(笑)。

竜騎士07:あったあった!なんだよ、クロスワード理論って(笑)。本当は数読にしようかと思ったんだけど、当時はまだないと思って、クロスワードにしてしまったんですよね。

確かにないですね(笑)。好きなキャラに関して、竜騎士07さんと八咫桜さんはいかがです?

八咫桜:金蔵さん大好きです。

竜騎士07:金蔵さんは萌えキャラですよね。

萌えキャラ!?

竜騎士07:絶対萌えキゃラですよ!すぐ泣いちゃうところとか。あれは立ち絵入ってから萌え始めたな。執筆中は「気難しい嫌なキャラだな」と思っていたけど。私の好みに関しては……そうですね、「嘉音は俺の嫁」ということで(笑)。

他誌でその発言を読んだ方が、「嘉音は女じゃないのか」とウワサしていますが?

BT:キャラ的に可愛い男の子だから、言いたくなる人もいるんでしょうね。

竜騎士07:人気投票ではあまり振るわなかったけど……。譲治は健闘しましたっけ?

BT:男性では第3位ですね。譲治は「トップじゃないけど、次に好きなキャラ」って感じなんですよね。今回は一番好きなキャラで投票して頂いたんですが、2番目に好きなキャラなどに条件を変えると、上位に上がってくると思うんですけど。

竜騎士07:第1話だと、戦人が主人公という位置づけがしてあって、どうしても譲治はサブキャラ的なイメージが拭えないですからね。やっぱり誰がどんなキャラクターかはっきり示すためには、スポットライトを明確にする必要があった。2人がスポットライトを浴びたら、どっちが主人公か見ている人が混乱してしまうので。これは『ひぐらし』の頃からそうで、目立たせるべきだったら目立たせる。「これが面白い」と思っても、目立たすべきでないときてしら自重する。バックダンサーが目立ちすぎてしまったら、それは舞台として失敗しているわけであって。その辺には凄く気を便いました。

ほうほう。

竜騎士07:メインを目立たせるために、演出を一部切ることもありました。例えば初日でいうと嘉音。朱志香がぜん息を起こしているところに吸引機を持っていってあげて、それを見た夏妃に中途半端に誤解されて、後で呼び出されてビンタを食らうシーンっていうのを用意していたんです。でも流れとして考えるとそれは収まりが悪い。嘉音を目立たせるシーンでもないということで切りました。そうした演出はけっこうありますね。

「夏妃が嘉音を嫌っている」という公式設定は、そこから来ていたんですね。ちなみに先ほど舞台の話が出ましたが、蔵臼はどんな役回りのキャラクターなのでしょうか?

竜騎士07:ラ〇ュタ王。

BT・八咫桜:言っちゃった(笑)。

竜騎士07:名ゼリフを言わせてみたいですよね(笑)。まあそれはギャグとして。彼は親族会議をキナ臭くする上で、いい役回りだと思います。

蔵臼は兄弟から嫌われているけど、夏妃にインゴットを見せるシーンでは口論後に「お前はそれでいい」と言いますよね。あれを見て、彼はただ嫌な奴じゃなくて、色々抱えているんだな……と思ったんですが。

竜騎士07:ヤツのそういう一面に気づいてくれたのは嬉しいですね。男だったら、カミさんに知られたくなかったり、首を突っ込んで欲しくないことってあると思うんです。極端な言い方をすれば「お前は同情だけしてくれれば良い。しばらく放っておいてくれ」という感じで。だから蔵臼的には、夏妃にあまり親族会議に出て欲しくないと思うんですよ。ただ第三者にとっては、そういう蔵臼の気持ちにも同情できる反面、夏妃の何かの役に立ちたいという気持ちもわかる。難しいですね。

そういう感覚は、リアルにありそうですね。

竜騎士07:ええ。『ひぐらし』のキャラは妻帯者が少なかったので、夫婦のやりとりはほとんど描かれませんでしたが、『うみねこ』ではそういう「大人の渋み」を味わって頂きたいですね。

同じ妻帯者でも、秀吉は蔵臼とは対照的にお笑いキャラですが。

竜騎士07:彼は親戚のおじさんに1人はいそうなコミカルなキャラですよね。皆「秀吉は空気が読めない」と言っているけど、逆ですよ。空気読んでいるでしよう。客なのに場を和ませようと気を使いまくって、くたびれ果ててるじゃないですか(笑)。良いキャラですよ。夫婦仲も良いし。

絵羽との夫婦仲が描かれた瞬間に「あ、死ぬんだな」って思いました(笑)。

竜騎士07:結婚話もあったし、『うみねこ』はあらゆる死亡フラグ満載ですよ。他にも色々やってみたいですね。

『うみねこ』はミステリーの王道?

先ほど、金蔵について少し話が出ましたが、多指症というのは珍しい設定ですね。

竜騎士07:そうですね。本来多指症というのは1000人に1人いるかいなかぐらいの、それほど珍しくないものなんですが、生まれてすぐ分かるから、日本ではすぐ手術するんです。だから大抵は自分が多指症だったことすら知らない。でも、ミステリーホラーの世界ではよく出てくるキーワードなんですよ。『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター教授も、多指症の手術歴があるという公式設定があって、死体を判別するには、多指症の手術跡を探せば一目瞭然なんです。

そういった設定を、今回は取り入れていると。

竜騎士07:そうです。だから『うみねこ』は、ミステリーが好きな人ほど「あ、あれは〇〇のオマージュだな」ってニヤニヤしてもらえる要素が散りばめてあるんですよ。それを見つけるのも楽しみ方の1つですね。

トリックに関してもそうですか?

竜騎士07:そうですね。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』などを雰囲気的な参考にしています。ただ1つ言っておきたいのは、ミステリーで描かれることの多い多指症を扱うからといって、人を差別したり、誹謗・中傷する気はないということです。先天的なものだから誰の落ち度でもないし、ページ数を多めに取って、簡単に治るものだということはしっかり書きました。だから「身体障害者に配慮を欠く表現だ」というご指摘はもらったことは一度もありません。

それは理解しております。ちなみに戦国武将の豊臣秀吉も、多指症だったということですね。名前のつながけから、『うみねこ』の秀吉も多指症で、金蔵と入れ替わっているんじゃないか、なんて推理が出ているんですが。

竜騎士07:それは面白いアイデアですね。焼死体を見たら入れ替わりを疑うっていうのは、ミステリーの基本ですしね。私だって顔が潰れた死体があったら、本人じゃないだろうって思う。皆そうだと思いますね。クローズドサークルと呼ばれるジャンルの、伝統的お作法ですよ。……まあ、私は「木を隠すには森の中」というのが大得意なので、一番隠したい情報があるときには、他に疑わしきものを邁っと用意しますが。

それを楽しむということですよね。

竜騎士07:そう、楽しむということです。疑ったりしないでね(笑)。ただ、ベアトリーチェ的には凄く不満でしょうね。死体の顔を潰しておいたら、「入れ替わりトリックが説明できる」などと言われてしまったので。次回以降は入れ替わりトリックなんて疑えない、キレイな死体を作るように努力するのではないでしょうか?ベアトリーチェは人間の仕業だと説明できることを、何より嫌うので。

より難解な殺害方法を行うということですね。

竜騎士07:例えば全員が揃っていて、アリバイがちゃんとしているところで事件を起こしたり、といった具合ですね。第1話の段階では何回も事件を起こしたのに、戦人にことごとく「〇〇が疑える」と否定されたし、チェーンのトリックだってドアの隙間から仕掛けを施せる、なんて言われてしまった。ベアトリーチェとしては「じゃあ、ドアをクギづけにしてやるよ!」という気分でしょう(笑)。

でしょうね(笑)。次に、作品のキャッチコピーについてお聞きしたいのですが、公式ホームページを見ると、「連続殺人幻想」と銘打たれていますね。

竜騎士07:『ひぐらし』のときは「連続殺人ノベル」というのがサブタイトルだったんですが、「連続殺人」という言葉は、非常に人間寄りなんです。どうしても人間の犯人しか想起させない。だから言葉の裏側に、魔女とかファンタジーが忍び込む余地がなかった。「連続殺人」というタイトルのせいで、オヤシロ様の祟り説が排除されてしまったというのがあるんですよ。ところがあら不思議、「幻想」って言葉が入ると、急に広がりが見える。素敵な言葉だなと思って、「連続殺人幻想」と名づけたんですよ。犯人当てどころか、推理できるかできないか……ミステリーかファンタジーかっていうレべルの話から始まってるんですよ。

他にも『ひぐらし』には「悩みがあるなら、身近な人(友人・家族)に相談しよう」というテーマがありましたね。それは今回も……?

竜騎士07:ありますよ。でも、今は申し上げることはできません。それは皆さんに思索してもらうことですね。『ひぐらし』だって、『鬼隠し編』が終わった後「悩んだら相談しよう」ってテーマを話したら、答えが出てしまいますから(笑)。

確かにそうですね(笑)。

作品音楽への思いと志方あきこさんとの出会い

今回、ゲーム中の音楽について意識されたことや、全体の統一イメージなどはありますか?

竜騎士07:やっぱり洋風の世界なので、洋風の楽器一バイオリンとかピアノを便ってこうしたい、というのは音楽家さんたちに伝えました。『ひぐらし』とはだいぶ違う、渋い雰囲気に仕上げて頂いたと思います。

皆さんそれぞれ好きな曲はありますか?

八咫桜:海のシーンで流れる「Sea」かな。

BT:どの曲も素敵な曲ばかりですけど、インパクトのある曲といったら死体を発見するときの「goldenslaughterer」。

竜騎士07:あれはいい曲だ。

BT:同じようなテンポの「システム零」とか「牢獄STRIP」も良い曲ですし。それから婚約指輪を渡すシーンで流れる、「Praise」みたいなキレイな曲も好きですね。

竜騎士07:個人的には「worldend」が好きですね。金蔵の書斎で、ベアトリーチェに関する昔話をした後に流れる曲なんですけどね。キレイな過去を彷彿とさせます。うさん臭さでいえば「胡散の香り」が良いかな。あれが流れるときの情報は、すべて信用できないもんな(笑)。

BT:ほかにも戦人が「ひっくり返すぜ!」って言っているときに流れる「Core」とかカッコいいですよね。

八咫桜:あれもいいですね。

竜騎士07:まだ隠してるけど、もっとカッコいい「WINER」って曲があるんですよ。でもあまりにカッコ良すぎて、出し惜しみしています(笑)。本当にカッコいいんですよ。これでキャラクターが登場したら、おしっこ漏らしちゃうくらいに(笑)。

BT:本当にどれも素晴らしいですよね。「Ride on」とか「hope」も、daiさん(音楽総監・デバッグ担当)らしい、希望疑れる曲で。

竜騎士07:スミイ酸さんの世界観も何曲もあるんだけど、どれもアンニュイな大人の日常っぽくて渋くて好きですね。

BT:雰囲気が出てますよね。

竜騎士07:土井(宏紀)さんの「Bring_The_Fate」は、あのままNHKの特番のエンデイングに使えると思います。

BT:もちろん、志方あきこさんのオープニングテーマも素晴らしいです。

竜騎士07:「曲名は何にしましょう?」って志方さんに聞いたときに、「作品のタイトル名をつけたい」と言われたときには、嬉しかったですね。音楽家にとって、曲名をつけるのは子供に名前をつけるのと同じことなので、凄い気を使うはずなんですよ。それを作品と伺じタイトルにして頂けるっていうのは、それだけうちの作品を信用して頂いているようなものですから、感激しました。

素晴らしい曲ですよね。

竜騎士07:本当に。今年の1月か2月頃には、最初の打ち合わせをしたんです。お忙しい方だと分かっていたので、「こういう納期で、時間は取れますでしょうか?」というのをしっかりとお話させて頂きました。

志方さんにオープニングテーマをお願いすることになったきっかけというのは?

竜騎士07:オープニングムーピーをやるにあたって、色々な曲を聴いたんです。そしたら、その中に私の世界に凄く合っているなという方とぶっかって……。それが、志方あきこさんだったんです。あれは志方さんがインディーズの時代に出した、ファーストアルバムだったと思います。「この方にぜひお願いしたい!」と思ってインターネットで調べたら、公式サイトがあって。メールを送ってみたら「打ち合わせをしましょう」と言って頂けて。で、指定された場所が、表参道のエイべックス本社ビルだったんですよ(笑)。

おお!(笑)

竜騎士07:だからこう言っちゃ失礼なんだけど、私、志方さんのご高名を存じ上げないで声をかけてしまったんですよ。「同人音楽家さんなんだ、ラッキー。同人の方なら話もしやすいな」と思って話しかけたら、同人だったのはずっと前のことで(笑)。ただ私としては、その時点ではもう「志方さんの音楽でしか『うみねこ』はありえない」と思っていました。なので、「相手がプロならプロで上等。プロの話をしてやるぜ!」と勇んで、冬コミの前には資料を完全に作って打ち合わせしました。

切り替えの早さが素晴らしいですね(笑)。

開発中の思い出は健康ブーム

開発当時を振り返って、楽しかった話や苦しかった話などをお聞かせ下さい。見てはいけないものが見えた、とか(笑)。

竜騎士07:今回はオカルトもへチマもなかったなあ。あらゆる心霊現象より、マスターアップの日付の方が怖いし。留弗夫じゃないけど、思うんですよ。心霊現象を怖がる人っていうのは、他に怖がるものがないから、わざとそういうもの作っているんだって。この業界、締め切りよりも怖いものはないですよ。

一同:(笑)。

竜騎士07:そうやって考えると、夜が怖い。やるべきことが分かってるときは、まだ良いんですよ。本当に怖いのは、(ゲーム制作時)末期の残り2、3日。「やり残しないかな。本当にこれでいいのかな」というのと、「あとはデバッグだけで終わりだ。早く寝たい!」というグシグシが入り混じると、一番危ない。どうしても、最後のデバッグの48時間はグシグシになるんです。

BT:ライトな思い出話をすると、にんにくブームでしたね。

竜騎士07:一日中にんにくゲップしていましたよね。「ゲフー」って(笑)。

BT:「何か凄い臭いがするな……生ゴミの臭いだ」と思って外を眺めたら、横でにんにくゲップしている人がいたんですよ。外じゃなくて、自分たちの臭いだったという(笑)。

竜騎士07:あと、八咫桜さんのパソコンの調子が悪くなったときに、ハードディスクからデータを移送する30分から1時間くらいの間、熱暴走を起こさないようにずっとうちわで扇いでいたこともありました(笑)。しかもうちわが1個か2個しかないので、代わりにゲームの空箱でパフパフやって(笑)。「大の男が深夜に何やってんだろう……」って感じでした。

賑やかなエピソードですね(笑)。

BT:あとは乗馬もブームでした。乗馬というのは、ダイエットマシーンなんですけど。

竜騎士07:皆で跨って運動した後、体重計に乗って、体重報告し合ってましたね。

八咫桜:BTさんが「体重72キロ台だ~」とか言って。

竜騎士07:そう。彼は私より2キロ多かったのに、この2、3週間で凄い痩せてしまって。「ビリーズブートキャンプ」ならぬ、「BTズブートキャンプ」とか言って、乗馬に跨りながら、水のペットボトルをバーベル代わりにするのが流行りましたね。皆凄い健康や体重を気にしていました。

BT:健康的な修羅場でしたよね。ただキりすぎて無性に夜中お腹空いてしまって……。

竜騎士07:だいぶ錯乱してましたよね。口に入れると太るからって、お菓子を頭に載せて「うめー、うめー」って悶絶して。たっぷり楽しんだら、去っていく(笑)。あれは、1つのムーブメントですよ。

一同:(爆笑)。

八咫桜:あとBTさんは今回、アイスボックスを山食いしてましたね。

BT:いっぱい食べていたら、周りにも浸透し姶めましたね。

竜騎士07:だって同時期に流行っていた神羅万象チョコなんて、1枚100キロカロリー以上もあるんですよ?それがアイスボックスは14キロカロリーしかない。「じゃあ神羅万象チョコ1枚我慢すれば、アイスボックスは7杯食べられるのか!」って話になって。

八咫桜:すべてのカロリーを神羅万象チヨコを基準に判断してましたよね(笑)。

竜騎士07:BTさんも「アイスボックス理論」を提唱して誰も異論を唱えなくなったら、急に確信を深めちゃって……。目に見えて消費量が増えましたよね。1日2杯くらいだったのが、6杯くらいに。近くのコンビニに行って20杯くらいまとめ買いして邁、2日くらいでなくなってしまうんですよ(笑)。だから、外出するたびにアイスボックスを補給していましたね。

そのおかげで、痩せられたのでは?

竜騎士07:そうですね。このブームが来年まで続いたら、07thの名物になりますね。次回は冬だから、さすがにアイスボックスは皆食べたくないだろうけど。

一同:(笑)。

BT:そうですね。本当に今回は皆、カロリーにうるさかったですよね。

竜騎士07:以前はBTさんがいたから安心していたけど、体重がみるみる減り出したから今回は心の安全弁がなくなったんです。「今まで散々バカにしてきたけと、今度は自分が……」という気持ちになって。急に「お前だけに(乗馬を)やらせるものか!」とか言っていました(笑)。

皆で競い合ったんですね。

竜騎士07:でも、それがほど良い気分転換というか、ゆらぎになったんですよね。いつもはカリカリ作業して「あと1週間しかない」っていうムードの中に、BTさんが謎のへルシーブームを打ち込んでくれて……。

緩衝材みたいな役目ですね。

竜騎士07:そうです。作業中も誰かが乗馬しているのを見て「何だこいつ。なに1人だけ痩せてキがるんだ」っていう気分になったり。良い気分転換というか、精神的なゆとりを残せましたね。

夜は夜で、お菓子を頭に載せたり?(笑)。

八咫桜:あまりにもお腹が空いてるので、BTさんも正気でキっているのかそうじゃないのか、分からないんですよ(笑)。

竜騎士07:それがネタになって面白かった。カロリー問題と今回の『うみねこ』は、切っても切り離せませんね。ファミレスに行ったときも「フルーツパフェは神羅万象チョコ6枚分だそ」って、値段じゃなくてカロリーで考えていました。

八咫桜:しかも単位が、全部神羅万象チョコ(笑)。

竜騎士07:「カロリー気にするなら(神羅万象チョコを)食うなよ!」って思うんですけどね。

なぜか流行りましたね。「皇帝テラスが出ない限り、真の07thのメンバーとは認めん!」とか言って(笑)。

素晴らしい作業場ですね(笑)。

竜騎士07:でもそうなったのは、皆10回近く修羅場をくぐり抜けて、慣れてきたからですね。まったく同じことを3年前の修羅場でやったら、「お前そんな呑気なことやってんなよ!」って罵声が飛んでいたかもしれない。

スタッフロールの秘密とこれからの展望について

今回、スタッフロールにエイベックスさんやアルケミストさんといった、名だたる会社の名前があるのを見て。今後の展開を期待さわた方々もいらっしゃるようですが?

竜騎士07:それは勘ぐりすぎですね。志方さんや江草さんにお世話になるときに、仲立ちとしてお世話になった経緯があるので、スペシャルサンクスとして書かせて頂いただけです。すでに何かが決まっている‥‥‥という話ではないですよ。

そうだったんですか。

竜騎士07:そうですよ。「『うみねこ』のコンシューマー版はアルケミストから出るんだろうな」って言うけど、冷静に胸に手を当てて考えてみて下さいよ。あんな残酷な話、コンシューマー版じゃ出せませんよ。『ひぐらし』以上に強烈なんですから(笑)。

失礼しました(笑)。それでは今年の冬に発売される、『うみねこ』のEpisode 2の制作進行状況についてはいかがでしょう?(※10月1日現在)

竜騎士07:煮込んでいる途中です(キッパリ)。

BT・八咫桜:(笑)。

楽しみにしています……(笑)。では、読者の方ヘのメッセージをお願いします。

竜騎士07:今回、思いのほかプレイヤーの皆さんが物凄い推理や想像をたくさんされているので、その情熱の素晴らしさに感動しました。生ぬるいシナリオではどうやらご満足頂けなかったようなので、作品の難易度を前倒しで上げていこうと思います(笑)。

BT:『ひぐらし』と同様に、『うみねこ』は1話出るごとに議論して、ユーザーの方々と一緒に楽しんでいる作品です。2話目が出てしまうと状況が変わってしまうので、その前にできる議論を200%、300%楽しんでもらえれば嬉しいです。

八咫桜:私の周囲ではよく「完結してから読むよ」という人多いんですよ。でも『うみねこ』にしろ『ひぐらし』にしろ、オチを読んでから展開を読むのではつまらない。完結するまでの過程でああだこうだやるから面白いんです。だから今1話。次はまだ第2話。間に合います、入ってきて下さい。Welcome to 六軒島!(笑)。

では最後に。犯人は誰でしょう?

竜騎士07:(即答で)ベアトリーチェ!

一同:(爆笑)。

竜騎士07:ベアトりーチエです。次回のベアトリーチェ先生にご期待下さい。ベアトリーチエ先生の作品が読めるのは07thだけ!

どうもありがとうございました(笑)。