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~うみねこ制作秘話~

『うみねこのなく頃に散』を作った男たち Episode7

新キャラクターの登場によって、夏なる真相が明らかとなった『Ep7』。

物語が佳境を迎える中、07th Expansionの方々の胸中に去来するものとは!?

新たなスタッフも加わり、インタビューはより華やかに!

『Ep7』制作で苦労したのは怒涛のロジックエラー修正!?

まずは『Ep7』制作を終えての、ご感想を聞かせてください。

なるせ椿:今回も画像関係をやらせて頂きましたが、その過程で「今回は演出を勉強しよう」とか、自分の中で目標を考えながら作業しました。そのせいもあってか凄く勉強になりましたね。次回はこの経験を生かして作品制作を手伝えたらいなと思います。

八咫桜:今回の制作では、色々と新しいエフェクトや演出を試して今までにないことができたと思います。『Ep8』以降でもどんどん新しいことに挑戦して行きたいと患います。

dai:『Ep7』は、スクリプトの初歩的な部分と、制作の流れについて勉強させて頂いた制作だったと思います。まあ、ミスもして、皆さんにご迷惑をおかけしたんですけど。あとは竜騎士07さんのスクリプトを拝見しながら、「自分の採用曲少ないな」とか思いました(笑)。冗談です。全体的に楽しみながら制作させて頂きました。

竜騎士07:いつも通り苦労しました(笑)。『Ep7』で一番苦労したことは、真相をどこまで暴いて、どこまで隠すかの按配ですね。書きながらずっと悩みましたし、テキストが出来上がってデバッグ中もまだ悩んでいて、デバッグしながら微修正したくらいです。『Ep7』を発表してから色んな方にプレイした感想を送って頂きましたが、「充分明かした、理解できた」って言う人がいる反面、「まだ明かしたりない、分からない」って人もいて、未だにあの按配で正しかったかは少し目信がないですね。

猫桜:とにかく作品がロジックエラーを起こさないように、話の前後、『Ep1』から『Ep6』まで整合性が取れるかどうかを、特に気にして今回はデバッグしました。

餡豆:なにもかもが初めてで、なにもかもが勉強だったのであっという間でした。気が付いたら夏が来て、すぐに冬が来る感じですね。『Ep8』でも今回勉強したことを生かして、もっともっと役に立てるように頑張りたいと思います。

各務:今回も忙しくて、濃密で楽しい時間でした。これがすべてだと思います。

時火:今回は、猫桜さんのようにロジックエラーを探すのに力を入れました。「あれ、この時ってまだこの建物あったっけ、ここにこの登場人物はいたっけ」って、過去のエピソードを遡りながらチェックしたので、自分の中でもストーリーの答え合わせをしてるような感覚で、シナリオを読みながら楽しくやらせて頂きました。

制作中の苦労話を聞かせてください。

猫桜:やっぱり、ロジックエラー探しじゃないですか(笑)。今回はこの一言に尽きます。

竜騎士07:『Ep7』は過去の話が多かったので、細かい部分でちょっと設定の詰めが甘いところもあって苦労しました。物語の一番重要な本筋は、最初から設定をしっかり作っているのでそうそうミスはしないんですが、今回は「作中の時点では、ロビーにベアトリーチエの絵はまだ飾られてないよね?」とか、背景写真による時系列のロジックエラーが多かったですね。「今、画面の切り替えでゲストハウスの画像が入ったけど、この頃はまだゲストハウスできてないよね」みたいな。テキストは皆、細かいところまで読み込むのですぐ気付くんですが、絵の場合はつい見逃してしまう。そういう物言わぬロジックエラーにずいぶん悩まされました。こういうデバッグって何人いても、気付く人は気付くし、気付かない人は気付かないんですよ。気付くとアハ体験状態です(笑)。

製作日記が途切れて、ファンの人が不安かる一幕もあったようですね。

竜騎士07:すいません(笑)。もうちよっと下らないことでも書けぱいいはずなんですけど。なんというか書きぐせがなくなってしまって、気付いたら3ヶ月くらい平気で書いてない時期もできてしまいました。考えてみれば、私から読者さんに直接言葉が届く唯一のホットラインなんで、これからはもっとちょっとしたことでも書くょうにします。

『Ep7』でのユーザーの反応はどうでしたか。『Ep6』の真相鮮明読本では、ユーザーの反応が大体分かるようになったとも仰つていましたか‥‥‥。

竜騎士07:そうですね。大体、期待していた方向で楽しんでもらえたなという手ごたえはあります。私どもは「こういう風に楽しんで欲しい」と考えながら作品作りをしているので、思った通りの手ごたえが返ってくるのは有難いです。ユーザーの反応が一番予想がっかないのは、シリーズの第1話ですね。作品が進めば進むほど、ある程度反応の予想がつくようになります。話が進むと、ユーザーの感情の振り子の振れ幅が大きくなるというか、評判の良い登場人物や展開がハッキリしてきますので、話を動かした時の反応も予想しやすいんです。ただ、シリーズが進むと、制作の際にユーザーが喜ぶことが分かりやすくなるという利点がある反面、ユーザーが喜ぶ話の方向性と、我々が考えている話の方向性が食い違うことがあります。思い通りに話を進ませるか、ユーザーが喜びそうな方向性で進めるか、その辺のさじ加減が未だに難しいです。今は『Ep8』を書いてる最中なんですけども、私が書きたい『Ep8』と、皆さんが期待している『Ep8』ってのは違うものかもしれないという不安はあります。でも、あんまり読者の意見に迎合して、物語を読者に任せてしまって書くのは、それはそれで駄目なんじゃないかと思います。だから今回も、迎合しないでワガママに書かせて頂きこうと思います。宜しくお願いします(笑)。

ウイルが『探偵』として登場した理由とは

『Ep7』についてお尋ねします。今回尊まずいぶん謎が解かれましたが、100%中何%くらい真相を出した感じでしょうか。

竜騎士07:かなり真相を出したつもりです。答えに辿り着いている人が見れば「ああやっぱりそうだよな、間違いないよな」と確信できる答えになり、「もう少しで分かりそう」という人には最後のヒントに、分からない人には「分からない」となるように真相を伝えたつもりです。前々から言っていることですが、『うみねこ』は考えていた人には分かって、考えていない人には分からない、そういう作りにしたかったんです。これが答えだというのを作品中ではっきり言わせてしまうと、考えてない人もすべての謎の答えに迪り着けてしまいます。すると頑張って考えた人が損してるような気がして。それで考えた人だけが辿り着ける場所を用意したかったんです。だから真相を100%出すことはしたくありません。今の状態で75%くらいでしょうか。

真相が描写さわていても、今まで幻想描写もあったので、ファン的には「これは本当のことか?」と疑ってかかってしまう部分があるのではないでしょうか。

電騎士07:見せ方には苦労しました。実はそこで、なぜ戦人でなくてウィルに探偵役を与えたかってことに繋がるんですよ。戦人っていうのは主人公である以前に、 相変わらず容疑者のひとりなんです。だからユーザーにとって、 戦人が物語の真相を暴いていくのは信用しきれない。戦人の語る真相は、戦人の目線で美化された戦人の幻想じゃないのって思ってしまうわけですね。同じように、実はあの世界の登場人物の誰にも探偵役は務まらないんです。 そのことがプロット作ってるうちに分かってきたんですよ。『うみねこ』ストーリーの答え合わせには、事件にまったく関わっていない人物が必要だってことで、急遠、ウィルって登場人物が必要になったんです。名探偵ホームズだって、ほとんどの事件で完全に容疑者に含まれていないですよね。事件に関係ない、中立の立場であるウィルや理御が探偵役になるからこそ、彼らが口にする内容に信憑性が出るんですよ。『うみねこ』には『赤き真実」がありますから、探偵役が赤文字で蝶りまくれば良いじゃないかとも思われるかもしれませんが、先程申し上げた通り、赤ですべてを言ってしまったら、考えてない人にも解答が分かってしまう。だから、 赤き真実は使わずに、それでいて戦人より、信用できる人に語らせたいということで、ウィルという登場人物が出てきたんです。実際このアイデアはうまくいって、ウィルが語る内容については、ユーザーの皆さんにもだいぶ真摯に聞いてもらえたと思います。 少なくとも、ウィルの語っている内容について、これは彼にとって都合の良い嘘だという印象を持った人は少ないと思うんです。そういう意味でウィルというエキストラを、『Ep7』でかなり、重要なポジションに出した価値はあったと思います。

確かに、エリカは探偵権限こそ使っていましたが、容疑者のひとりということでファンも疑ってかかっていましたよね。

電騎士07:エリカは『探偵』という名称を持った魔女のライバルキャラであって、ストーリーを解明する探偵役ではないですね。

信用してもらえたというのは、ウィルの人柄にもよるのでしょうか。

電騎士07:人柄もあるかもしれませんが、どちらかというと、 ウィルは少なくとも六軒島の事件とまったく関係のない新規キャラで、どの人物とも利害関係がないじゃないですか。事件の登場人物でさえない。そこのところに中立性を感じてくれたんじゃないかと思います。 容疑者の誰かや、 容疑者のひとりに縁の深い人物が真相を語ったら信用はできないですよね。 正直、『Eр7』みたいなクライマックスに近いエピソードで、今更新しいキャラに話を進めさせるのはどうかって言う悩みもあったんですよ。でも、結果として、ウィルという物語を腑分けする役が信頼してもらえたので、彼を出したことは正解だったと思っています。

なるほど。今回の「真相解明読本」でも登場人物を現実の人物と幻想世界の人物に分けるのにとても苦労しました。

電騎士07:今回の作品は特にそうなんです。今までの作品は『人間』勢と『幻想』勢で登場人物を分けられたんですよ。『Ep7』では、現実の人間と幻想の人間のリンクについて語ったので、そこが特に曖昧になっちゃったんだと思います。

はっきり分けることが正しいわけじゃないという答えなのかなと感じました。

電騎士07:そういうことですね。幻想の登場人物と現実の登場人物は、限りなく地続きになっているんです。 登場するシーンによって、 現実とも幻想とも言える登場人物も多くて、この本(真相解明読本)の編集も大変だとお察しします。監修してもらっているスタッフからも、「難しいね」「ここは断定では言えないね」という意見が多くて。でも、申し訳ないですが、今回は断定したくない部分が多いんですよ。どちらに解釈するかは読者の方の想像に委ねたいんです。

赤文字、青文字、金文字の定義についても明言はされていませんが、これも解釈は読者に委ねる形になるのでしょうか。

電騎士07:色文字については、『Ep8』で緑寿と戦人を通じて赤き真実についての話は少しするつもりで、多少は語ると思いますが、「これが最終決着!」みたいな書き方はしないと思います。 こういう風に考えられるよ、という考え方の示唆はするつもりです。

ウイルと理御を徹底解剖!?ニューカマーの制作秘話

ウィルの名前の由来は、小説家であるヴァン・ダインの本名、ウィラード・ハンティットン・ライトから来ているんでしょうか。

竜騎士07:はい、そうです。オマージュでお名前をお借りしました。

ウィルと理御は、オフィシャルサイトの有志による人気投票でも上位でしたね。

竜騎士07:ウィルが痛快に謎を解いていくからでしょうか。でも、ちょっと戦人の立場がないですよね(笑)。 戦人もかわいそうな役なんですよ。だって、全8話の物語で、序盤でどんどん真相を暴いてしまったら物語にならないじゃないですか。戦人はどうしても珍推理や迷推理をしてもらわないといけなかった。ウィルは答えを出すために来た役なので、切れ者役でいいんですけど。本当は戦人がそういう切れ者役をやれれば、汚名返上のいい機会だったんですが、先程も言った通り物語の性格上、戦人が真相を語ると信用できない。そんなわけでウイルには今回美味しいところを持っていってもらいました。『Ep7』はこれまで煙に巻いてきたことの答えを明かしていくのがテーマだったんで、ウイルと理御は今回本当に物語を、サクサクと、煙に巻かずに解いてもらいました。かなり気持ちょく真実を暴いていったと思いますので、主人公の戦人並に人気が出たのは狙い通りでもありつつ、いいのかなあ、主人公大丈夫かなあ、とも思いつつ……戦人に申し訳ないですね(笑)。

ウィルと理御が物語を解明するための役ということは、彼らが言っていることは真相と思っていいんでしょうか。

竜騎士07:そうだと思ってくれてもいいし、話半分と思ってくれてもいいし、そこは強制していません。 ただ、ただウィルと理御のような信頼性の高い登場人物が口にすることが信用できないなら、もう誰の言うことも信用できないんじゃないんですかねぇ(笑)。

ウィルが所属しているSSVDとアイゼルネ・ユングフラウとの関係性は。

竜騎士07:管区が違うという設定なんですよね。魔女と敵対する機関の天界大法院の、第八管区がSSVDでヴァンダインの二十則を使っていて、第七管区がアイゼルネ・ユングフラウで、 ノックスの十戒を使って戦っているという設定です。

ウィルはドラノール達と面識があるのかもしれないですね。

竜騎士07:面識はきっとあるでしょうね。そこら辺はファンの方でいろいろと想像して頂けたら嬉しいです。私も機会があったら、このあたりのエピソードを書けたらいいなあと妄想はしてるんですけど(笑)。

是非読んでみたいです(笑)。理御についてですが、理御の性別は不明ということで。人物紹介のところで「好青年」と書かれているので、「男なんじゃないか」と思った読者の方もいたようですが。

竜騎士07:理御は性別不詳ですね。『好青年』の件は、うちのスタッフにも、デバッグ中に「好青年だと男に限定されてしまいませんか」って言われたんですよ。『青年』は男のことって勘違いされがちなんですけど、本来は『中年』や『熟年』といった言葉と同じで、男女どちらの意味も含みます。いやあでも、 誤解を招いてるなら、好青年って書き方は悪かったかもしれないですね。

理御の性別が分からないことこそ、 ゼパルとフルフルが暗喩していることなのかと思いました。世間ではどっちが男か話題になっていますが……

竜騎士07:はい、理御の性別を意味しているところもありますね。実はゼパルとフルフルは、『Ep6』を作っている時には性別が分かるように書いていたんですよ。ところが、人物紹介の執筆時に突然天啓が降りてきて、「性別を分からないようにすると面白いんじゃないか」と。それであなりました。緘口令 を敷いてますけど、脳内設定ではどっちが男か決まってるんです。

餡豆:スタッフは知ってます(笑)。

竜騎士07:でも、読者がそこを気にしてくれたなら、これで正解だったのかなと。 すごい時代ですよね、男の娘ブームとか(笑)。

理御に関しても、「男でも女でもどっちでも好きだ!」みたいな熱い意見もあるようですが。

竜騎士07:性別・理御ってことで(笑)。

ウイルたちのビジュアル制作悲喜こもごも

ウィルと理御のビジュアルについてコメントを頂けますでしょうか。

時火:ウィルは原画をもらった時には、格好いいキャラだなっていうのが第一印象でしたね。「あ、すごいイケメンだ」って。

竜騎士07:ウィルは髪の毛がひと房赤いですが、これは最初はなかったんです。 原画の時点ではただのモノクロだったんですよ。

猫桜:カラーバレットを見た際、ウィルの髪に何か一色アクセントが欲しいと思いまして、彼の髪にメッシュを入れる提案をさせて頂きました。

竜騎士07:試しに色を変えて塗ってもらったら雰囲気も良かったので、ウィルの髪色が決まりました。まさかこのせいでイトミミズと呼ばれるようになるとは(笑)。スタッフの間ではトウガラシって呼ばれていたんですけど(笑)。

時火:ウィルの刀が黒いのも特徴ですね。

猫桜:皆でウィルの武器は何にしようか話し合った時、最初は弓やムチって案も出ていたんですよね。

竜騎士07:ただの剣じゃちょっとありがちですし、斬新な武器のアイデアが良いなと思いまして。

餡豆:ムチだったらちょっと面白い感じになってしまいますよね(笑)。

竜騎士07:そう、色々考えたんですが、捻れば捻るほどおかしい方向に行ってしまって。結局、ウィルの素直な性格には刀が一番ピッタリでした。

時火:餡豆さんが頑張って、 格好いい意匠をたくさん考えてくれました。

餡豆:日本刀って聞いて、刀の画像を検索してみたり。あと、ただの日本刀ではつまらないから、ちょっと凝ったデザインを入れた方が、とか、色々悩みました。

猫桜:あとウィルのビジュアルと言えば、 ウイルがコートの中に着てるインナーの色についてももめましたね。最初はたくさんカラーバリエーションを作って、どれにするか考えていたんですけど、「青いコート」という設定はほぼ確定していたので、白でいこう!

となりましたが……。

竜騎士07:グ〇ゼのシャツにしか見えないんだよなあ(笑)。

餡豆:私はずっとグ〇ゼって仇名でウィルを呼んでたんですけど、世間ではイトミミズって呼ばれるようになって「グ〇ゼなのに……」ってちょっと寂しかったです(笑)。

竜騎士07:最初に私が原画を描いた時は白黒で、特に最近、そんなに色の指定はしていないんですよ。私の中で厳密に色のイメージがある時は、簡単に仮塗りしたりして伝えていますが、お任せしてしまうと、皆で試行錯誤して色調整してくれる。だからウィルは傍で見ていて面白かったですね。

猫桜:理御は逆に、竜騎士07さんの方から女性とも男性ともつかないようなカラーセンスと指定がありました。パンツスタイルなので、やや男性よりに見えるかもしれないということで、カラーリングは女性っぽいエンジ色にしました。

竜騎士07:デザインに関しては、理御は本当に迷いました。まず、男にも女にも見える服ってのが分からない。スーツを着せると、男よりに見えてしまうし。 それであの乗馬のような格好をさせてみると、うまい具合に性別が消失して、男にも女にも見えるようになりました。あとは髪型ですね。男にも女にも見える髪形ってどんなものだろう、とすごく悩んで、正直、いまだに悩んでいるくらいです。 ベリーショートにしたら霧江とかぶるし、ロングで考えたら、なんか耽美な雰囲気になってしまって(笑)。どうにもうまくいかなかったんですよ。でも、熟考の甲斐あって、理御のデザインに関しては男にも女にも見える良い絵になったと思います。

時火:理御のデザインといえば、江草さんの肖像画を下書きとかで見せて頂いた時、「あれ、胸が少し膨らんでるんじゃないか」っていう風に、女性に見えたりしましたね。

竜騎士07:読者の皆さんの間でも、胸のあるなしは話題になっているようで。「絶壁」という仇名までもらってしまいました。 サラシかもしれないですよ?(笑)

各務:理御が着けているアクセサリーは、あえておそろいにしたんですよね。

猫桜:緑色のブローチですね。あれは夏妃とおそろいにしようと。家族みんなでおそろいのアクセサリーを持っているんです。……朱志香が可哀想なんですけど。

竜騎士07:朱志香は持ってるんだけど、恥ずかしくて着けないんですよ(笑)。

猫桜:そんな感じで、あれは家族の象徴みたいなイメージです。

各務:装飾品と言えば、ウィルの肩のベルトは、何故着けているんですか?

竜騎士07:あれは『格好いい』ベルトです。

餡豆:ウィルは『格好よさ』の境ですからね(笑)。

竜騎士07:はい。とにかくウィルには、格好良さそうに見えるアクセサリーをたくさん着けました。 腰に巻いてるものもそうで、用途がよく分からない。謎の布です(笑)。トイレでズボン脱ぐ時大変そうだなあ。

猫桜:腹巻になってるんですよ(笑)。会社が冷えるのかもしれません(笑)。

竜騎士07:コートのボタン、前を止めればいいのに……(笑)。

(笑)。ウィルは何歳くらいのイメージですか。

竜騎士07:う~ん……どうなんだろう。最近、自分の年齢が増えてきたせいか、理想とするヒーローの平均年齢も上がっちゃったんですよね。昔は物語のヒロインやヒーローはすべて16歳が適齢期だと思ってたんですよ。でも成人してみたら、「なんで16歳の子供に世の中のすべてが分かるんだ」って気持ちになって、最低でもヒーローは22歳くらいじゃないとダメだと思って。更に歳をとったら「いや20歳なんてまだまだ若い」と(笑)。30歳~40歳の渋みのあるヒーローじゃなきゃと思ってしまって、多分これからも、歳を重ねるにつれ、理想のヒーロー像に貫禄が出てくるんでしょうね。一般的なゲームやコミックだと、大抵10代~ 20代前半で主人公格は占められていて、20代後半になるとベテランの空気をかもし出すキャラになっている。ああいう世界では、寿命が30歳くらいなんですかね(笑)。それくらい20代後半にして達観してますよね。実は私は『ひぐらし』の頃から、若者しか出てこない話が嫌だったんですよ。だから『ひぐらし』も、大石とか、若者だけじゃなくて年配陣も活躍する話になってるんです。『うみねこ』の場合は年齢幅こそ広いですが、若者がメインの話ですけれどね。

『うみねこ』でも『ひぐらし』でも、大人が子供のおまけではなくて、ちゃんと役割のある大人として描かれていますよね。

竜騎士07:人間というのは年齢に比例して成長していくと思うので、大人をないがしろにして子供だけが活躍する作品はなんとなく腕に落ちないんですよね。……なんて言ってて、次の作品がそういった感じだったら、ごめんなさいって感じですけど。

八咫桜:16歳が世界を救う話とか。

各務:30歳が寿命の世界ならいいんじゃないですか(笑)。

新キャラクターである、クレルについてお聞かせください。物語では、紗音やヤスの人生を語る朗読役として登場しますが。

竜騎士07:ああ、そうか、クレルも一応新規の登場人物のくくりに入るんですよね。個人的に、クレルは新しい登場人物って感じじゃないんですよね。クレルって、ミステリー漫画における、「全身黒タイツの男」なんですよ。犯人が分かっていない時、犯人の再現シーンでいつも全身黒タイツの男が出てくるじゃないですか。あの黒タイツの男がクレルなんですよ。だからクレルは『人』じゃなくて『unknown』、ゲーム風に言うと『あやしい影』なんです。それにしては、綺麗なビジュアルにできたから良かったです。ボンネットやドレスが大変でしたけど。

餡豆:「もうドレスは終わりだ」って言いながら描いてましたね(笑)。

竜騎士07:いや、ロングドレス疲れるんですよ!私は長い直線が苦手なんです。 フリルも疲れました……。

今回、クレルが語る場所は劇場だったわけですが、劇場という場所に意図はあったのでしょうか。

竜騎士07:これまでのエピソードには、 観測者、観劇者という言葉がたくさん出てきます。彼ら……ベアトリーチェのようなゲームの駒としての魔女ではなくて、フェザリーヌのような本当の意味での魔女たちから見ると、この世界はお芝居を見ているように見えるわけです。それならば、 彼らは劇場で見ているのがふさわしいだろうと、劇場舞台の絵が出てきました。

若かりし頃の金蔵なんかはどのように描かれましたか。

竜騎士07:戦人と互換性があるようにするつもりだったので、表情は戦人で、髪型はどうするかを悩みました。男を描くより女性を描きたいですし(笑)、かなり悩みました。特に髪型が思いつかなくて。精悍なイメージで、時代が時代ですから、そんなに奇抜な髪型ではないでしょうし……。

餡豆:時間がなければ、戦人の髪型のまま、髪の色だけ白くすればいいと言ってましたよね(笑)。

竜騎士07:そんな時に、『うみねこ』のコミカライズを担当して下さっている夏海先生の漫画に、若い頃の金蔵っぽい絵があって、イメージに近かったのでそのビジュアルを参考にして描きました。ただ、私の絵が下手なせいで、夏海先生のデザインの魅力がまったく伝わってないんですよね。 申し訳ありません(笑)。

時代考証も考えて描かれているんですね。確かにベアトリーチェ・カスティリオーニも、潜水艦に乗って旅をして来ただけあってパンツスタイルでしたね。

餡豆:時間がなければ、もしかしたらベアトリーチェのドレス姿だったかもしれないですけどね(笑)。

竜騎士07:イラスト担当が他にいれば、「お姫様っぽい格好にしておいてよ」って依頼した可能性はありますね(笑)。でも、潜水艦から出てくるわけですから、着替えも少ないでしょうし、男物の服を共有している空気感にはしたかったんです。それと、 ベアトリーチェ・カスティリオーニにはオードリー・へップバーンが演じているようなイメージを持っていたので、当時の洋装を色々と調べて参考にして、今のようなデザインに落ち着きました。でも、ゲーム本編では腰から下は見えないんですよね(笑)。

サロ共和国についてはかなり調べられましたか。

竜騎士07:はい、舞台設定ということで調べました。まあ、ほとんどの方がサロ共和国ってご存知ないですよね。世間的には、三国同盟の中でイタリアは早々に降伏したと言われているくらいで。我々日本人の平均的な教育では、その辺の知識は薄いので、きちんと勉強しました。 意外だったのが、女性ファンの方がこの辺りの知識に詳しかったことです。男性ファンの方が知ってる人は少なかったですね。

最初から、金蔵たちのエピソードは戦中と決めてらしたんですか。

竜騎士07:はい。これは『Ep1』執筆より前、一番最初のプロット段階で決めてあった設定だったので、 すんなりと書いていけました。決まってなかったことといえば、潜水艦から出てきたベアトリーチェと金蔵が、いかにして仲良くなったのかってところですね。プロットの段階では「潜水艦から出てきて仲良くなった、一目ぼれした」としか書いてないので。それを説得力のある流れにして決めていくのは、『Ep7』執筆の際に決めることでした。

解読された碑文、どうやって『碑文の謎』は生まれたのか

碑文が完全に解かれました。 世間で『台湾説』と呼ばれている説が正解だったわけですが……。

竜騎士07:私、普段は匿名掲示板はそれ

ほど見ないんです。たまたまオンタイムで

「今、台湾留学中なんだが……」って書き

込みを見てしまって、その瞬間「あぁ〜、痛

いなぁ~」って思いました(笑)。あと1年は見つかって欲しくなかったですね。私も碑文の謎は、「よくこんなに解けない謎を作れた」と自画自賛していたんですが……。 お見事ですね。 解かれた時は正直ショックでしたよ。

それはいつ頃のことでしょうか。

時火:確か『Ep4』が出た後あたりですね。

竜騎士07:そのくらいでしょうか。100%当たっている説が出たのはもう少し後ですが、台湾説自体は早い時期から出ていましたからね。台湾説が書き込まれた当時は、掲示板で主流の説にはなりませんでしたが、もし「これに間違いない!」ってその時点で主流になっていれば、連載のモチベーションが下がっていたかも(笑)。それは冗談ですが、初期に台湾説が主流を握っていたら、多分『Ep7』を待たずに『Ep4』や『Ep5』あたりで碑文の謎は解決させてしまって、物語を別の方向へ進めさせたんじゃないかなと思います。そういう意味では、あの謎は『Ep1』公開から2~3年、よく頑張って解かれずにいてくれたと思います。

碑文の課を台湾にかけて制作されたきっかけはなんですか?

竜騎士07:まず1つは、解けない謎にしなくてはいけないという思いがありました。連載の最後の方……早くとも『Ep6』、遅くとも『Ep8』くらいまで、連載が始まってから2、3年は解かれてはまずいと。 インターネットでは様々な情報を持ってる人が、皆で集まって意見を交わし合っています。そんな場で何年も解かれないようにするために、物凄く難解な謎にしたかったんですよ。それから、当時たまたま家族旅行で台湾に行って、淡水線に乗ったんです。 電車の中で駅の名前をぼんやり見てるうちに「ふーん、なんだか面白そうだな」と思ったのがもう1つのきっかけですね。台湾の漢字って、日本人になじみのある漢字が多いんですよね。 中国だと簡略された簡体字もあって難しかったりするんですが、台湾の漢字はほとんど読めるんです。だから台湾に行った時は非常に面白くって。電車に乗っても、面白い駅名がポンポン出てくる。「台湾で駅名か。じゃあ、日本統治時代に金蔵は台湾に住んでいて、それで淡水線を元に……」と想像を膨らませていたら、難解そうな謎ができたので、碑文の謎はこれで行こうと。金蔵の生まれは小田原って言っておけば、まさか台湾とは思わないだろうと思ったし、まさか台湾に『うみねこ』を推理するファンの方がいらっしゃるとは思わなかったんです。 絶対解かれないって自信があったんですけど。……ちなみに、唄哩岸駅で降りたことはないです(笑)。淡水には行きましたけどね。夕焼けのすごく綺麗な港町でした。

『Ep5』で、蔵臼と夏妃の新婚旅行の描写がありましたが、あの辺りも台湾旅行の経験を生かされているのでしょうか。

竜騎士07:ビンロウの話ですよね。そうです。台湾旅行に行った時、ガイドさんがビンロウっていうのは台湾の嗜好品で、煙草の代わりに噛むんだよって説明してくれました。でも「噛むと眠気覚ましになります」「冒がやられるので汁は飲み込まないで下さい」「中毒性があって口が真っ赤に染まります」.……ってそこまで言われたら、なんか怪しいと怖くなってしまって、結局私は噛みませんでした(笑)。現地でビンロウを噛んで、ビンロウの味を体験済みだったら作中でもビンロウの味について語るシーンがあったかもしれませんね。当時は怖気づいてしまいましたが、ちょっと後悔しています。1回くらい試しても良かったかもしれません。どんな味がするんでしょうね。その後ビンロウのことを調べてみたら、向こうでは縁起物で、結婚式の時に配ったりするそうなんです。それじゃ、新婚旅行ネタに取り入れようと。

若かりし金蔵の行動は『幻想』か『現実』か?

金蔵とベアトリーチェ・カスティリオーニの若い頃のエピソードが明かされました。このあたりはどういった気持ちで描かれたのでしょうか。

竜騎士07:金蔵と初代ベアトリーチェの出会いが全ての始まりなので、ふたりの出会いがなるべくドラマチックかつ、ちょっと洋画っぽくなるといいなと思いながら書きました。やはり、この出会いは運命的な感じがいいなと。実際には金蔵の年齢を考えると、そんなロマンチックなことを語る年齢なのか? とも思いますが(笑)。

あの時点での金蔵の年齢は、もう蔵臼たちも生まれてますから……

竜騎士07:下手すると40前後でもおかしくないですよ(笑)。

立ち絵は若く見えますよね。

竜騎士07:あれは、心がいつまでも若いということじゃないのかな(笑)。立ち絵の方が幻想だったかもしれないですね(笑)。

ベルンカステルがクレルのハラワタを切り裂いたシーンでは、実は金蔵の方が黄金を察おうとしていましたが……。

竜騎士07:ねえ、なんでしょうね、あのシーンは(笑)。私なりのちょっとした最後の一捨りのつもりです。これまで見せてきたものが真実とは限らないよ、みたいな。 何しろ、金蔵と初代ベアトリーチェの過去シーンは、金蔵の口から語った金蔵ロマンス、要するに金蔵目線の物語なんで、金蔵の都合のいいことしか言ってない可能性があるわけです。『Ep7』っていうのは、限りなく答えに近いことを書いておきながら、最後の一点でその答えを拒否できるようにもしてあるんです。これも、先に言った「どこまで真相を明かして、どこまで隠すか」というさじ加減の1つなんですよね。このベルンカステルがクレルのハラワタを引き裂いて出てきたシーンも、ある意味それまでの説に対する異聞のような意味があります。是非、ユーザーの方々には色々と考えて欲しいです。

ベルンカステルを信用できるか否かという着眼点だと、お茶会で霧江と留弗夫が、直接的な反抗に及んだエピソードが気になります。ベルンカステルの赤字を信じれば、彼らが生き残る『Ep4』以外は偽書ということでしょうか。

竜騎士07:まず最初に、ベルンカステルの言うことが信用できるかできないかっていうところですよね。ベルンカステルは「これはすべて真実」と言いましたが、セリフの途中で縁寿の悲鳴によってかき消されています。ひょっとするとベルンカステルは「これはすべて真実……だったらいいなぁ」とか言おうとしてたのかもしれません(笑)。ベルンカステルのセリフは、括弧で閉じていませんからね。あれが真実だと思ってもいいし、ベルンカステルのことだから紛らわしいことしてるんじゃないのって考えてもらっても結構ですし。それを考えて頂くのも『Ep7』の楽しみ方です。

お茶会と裏お茶会での描写は、本編ではないから、怪しいと見る向きもありますが。

竜騎士07:あまり本編だからお茶会だからっていう区別はしていないですね。本編とお茶会と裏お茶会と、ストーリーが三区分になっているだけでお茶会であるから何かっていうことはないですね。『Ep1』とかは『お茶会』のふりをしていた頃もあったんですけど、エピソードが進むにしたがって、お茶会という名の一編になってますね。アニメ風に言うとCパートみたいな感じです。

そうなんですね。では、裏お茶会も立派な推理材料の1つということで……。裏お茶会ではフェザリーヌが眠りにつきますが、このシーンはどういった意図で描かれたのでしょうか。

竜騎士07:単純に言ってしまうと、この物語で、私なりに辿り着いてもらいたい真実とその情報の提示が終わったということが暗に描かれています。フェザリーヌという真実を知りたがっている魔女が、「もうこれで充分だ、あとは考える」って宣言して眠りについたということは、ここまで出た情報で私が言いたいことは言い終わったんですよ、という。ある意味、推理小説で、探偵が「謎はすべて解けた!」と宜言するみたいな、それに当たるシーンですね。この物語のテーマは既に語り終えたという、1つの表現ですね。

ついに明かされた事件の発端『犯人はヤス』!?

ヤスについてお尋ねします。ヤスの動機は『Ep8』で明言されるのでしょうか。

竜騎士07:ヤスの動機っていうのはつまり、物語のホワイダニットですね。『Ep7』の中で何度も、ホワイダニットが大事なんだって話をさせてもらいました。だからこそ、『Ep7』の中でヤスの動機について考えて頂きたい。ですから、『Ep8』ではヤスの動機に関してはこれ以上踏み込んで描くつもりはないです。『Ep7』までで充分だと思いますし、『Ep7』で分からない方には、クレルの言葉にもあったように「それ以上説明を重ねたところで分からないだろう」と思います。

「戦人に自分のホワイダニットを推理してもらいたくて犯行を起こしている」という説もあるようですが……。

竜騎士07:いい解釈だと思います。以前、少年が非行に走る理由のほとんどは、自分に関心を持ってもらいたい、自分のことを理解してもらいたいというある種のサインから、非行が始まるという説を聞いて、なるほどと思ったことがあります。何かで読んだ話ですけど、犬が咲えたり噛んだり、するのは、犬が自分に関心を持って欲しいから飼い主に対して反抗するんですよね。それと同じで、非行は自分に関心を持ってもらいたい気持ちの裏返しなんじゃないかという見方があります。ある種、ベアトリーチェが予告状を出したり、色んな事件を起こすのも、誰かに自分の事件を解いて欲しいからっていう可能性はありますね。きっと、戦人が戻ってきたら出題したいと思って、彼女は6年間ずっと、密室トリックとかを考えてたんじゃないですかね(笑)。

ヤスの同僚、先輩たちが、煉獄の七姉妹が同じ容姿だったことに意図はあるのでしょうか。

竜騎士07:意図を感じ取ってもらえると嬉しいですね。ロノウエとかワルギリアみたいな幻想の住人が、実際に出てくる使用人たちとキャラクターにリンク性があるのと同じように、煉獄の七姉妹にもリンクがあったんじゃないかと考えてもらうのは、いいと思います。

ヤスが想像の中で七姉妹を作り上げた際に、先輩たちをモデルにしたという感じでしょうか。

竜騎士07:そうかもしれませんね。まあ、そうするとヤスが同僚を勝手に次々と萌えキャラ化していったってことになるわけですが(笑)。ワルギリアと熊沢がリンクしているのも、ヤスにとって熊沢が母のような先生のような存在だったから、あのように想像したってことですね。ヤスはすごい想像力のたくましい子ですよね。

ヤスという仇名から、「犯人はヤス」というフレーズが思い浮かびますが、このネーミングは「ボートピア殺人事件(※1)」のオマージュですか?

竜騎士07:私が一番この作品を制作していて恐れたことは、犯人が判明するなりインターネット上で、「犯人は誰々」と、犯人の名前だけをあちこちに書いてまわられることだったんです。『Ep7』『Ep8と話が進めば最終的には真犯人が特定される訳ですが、そういう真実テロみたいな、情報テロを起こそうとする人は、必ず現れるだろうと思ったんですよ。どうやったらしないでくれるんだろうと考えていたら、約1~2年前に「あれ、犯人の名前がヤスだったら、書き込みは”犯人はヤス”になるんじゃないか?」って子供のような閃きがあって、それで採用してみました。一度しか使えない大技だったと思います(笑)。

さくたろうとさくすけは現場のマスコット?

真里亞のセリフで、ぬいぐるみのさくすけが登場しました。以前、文芸誌『パンドラ』に寄せていらした『コーヒーのお話』に豊場するさくすけと同一人物なのでしょうか。

竜騎士07:きっと同じなんじゃないでしょうか、名前も同じだし。でも、あのコーヒーのお話が真里亞と関係があるのかと言われると、ちょっとどうか分かりませんが、手塚治虫先生の漫画的手法であるスターシステムに則れば、同じさくすけだと思って頂いていいです。さくすけもさくたろうと同じく、ライオンをモチーフにしているんですが、形がちょっと違っていて、もっと円柱状の枕のような形をしているんですよ。あれ、今daiさんのパソコンの上に乗ってるんでしたっけ?daiさんの家にもいるんですょね。我が家にもいますけど。

dai:はい(笑)。すごく可愛いです。

竜騎士07:BTさんもあれは大好きでした。一時期、職場に自動掃除機があって、その上にさくすけを置いていたことがあったんですよ。自動掃除機って、部屋の中を勝手に走り回って掃除してくれるんですけど、さくすけが絨毯じゅうを走り回って掃除してまわるみたいで、面白くって。

猫桜:どうやってさくすけを掃除機に固定しようか話し合ってましたよね(笑)。

竜騎士07:両面テープで……とかひどいことを考えてました。このシリーズの製品は色々持っています。作業場の椅子に子供用シーツみたいなのがかけてありますね。

餡豆:あれは私がdaiさんにあげたんです。

dai:こう、さくたろうに包まれながら作業したいなと。

竜騎士07:あれ、毛布を椅子にかけて、椅子カバーみたいにして使ってるけれど、どうしてもさくたろうの剥製に見えるんですよね(笑)。ほら、虎の皮はいで作る剥製みたいな。……そんなわけで、作業場もさくたろうがいっぱいです(笑)。

気になる、怖かった、気に入っている、『Ep7』のあのシーン

『Ep7』で特に気に入っているシーンはありますか。

各務:ウィルと理御が最後に決意を述べるアップかな。

時火:個人的には、ガァプがヤスに張りついて、カギを魔法で操ってしまうシーンが好きです。もしこんな魔法を使えるとしたら、とか色々と想像が膨らみますし、魔法を使っている描写にドキドキしましたね。その後の『魔法の感じが手に残ってる』っていうシーンや、ヤスが紗音と別れて魔法の世界を選ぶシーンも「ああ、いいなあ」という感じで、ワクワクしながら見ました。

dai:私はラストシーンで、戦人が縁寿に対して「これは悲しい話じゃないんだよ」と語りかけるくだりが好きです。すごく暖かいシーンだなあと思いました。それまでが駄目だった訳ではないんですけど、すごく救われた気持ちになったんですよね。

竜騎士07:あそこは、直前までベルンカステルが救いのないことを言ってましたしね。

dai:あのシーンで、『うみねこ』が自分の中で終わっちゃったような気分にさえなりました。いや、終わってないですけど(笑)。そのくらい爽やかな気持ちになりました。

餡豆:この会話の流れで、理御がウィルのお尻をつねるシーンが好きですとは言い辛いですね(笑)。

なるせ椿:あのふたりのやり取りは見てて面白かったですね。

猫桜:私は戦人と紗音が、お互いの気持ちを探るように、ミステリー談義をするシーンがとっても気に入っています。ただの過去話だと仰られる方もいるかもしれませんが、「人は謎なのだ」という「言葉は『うみねこ』の物語を語る上では欠かせない、重要なメッセージの一つなのではと、個人的に考えさせられたシーンでした。

なるほど、女性ならではの視点かもしれませんね。

竜騎士07:私はどのシーンも疲れましたとしか言えないですね(笑)。強いて言うなら、最後に劇場でベルンカステルとウィルが対時して戦う辺りでしょうか。音楽との相乗効果もあって、書きながら、盛り上がりましたね。今回はとにかくデバッグが長くて、どこまでデバッグしても終わらなくて、流石に終盤は疲れてくるんですけど、ちょうどこのシーンに差し掛かると、ムードが変わって盛り上がって、眠気が吹っ飛びました。あそこをデバッグしてる時が一番楽しかったですね。

印象的なシーンと言えば、ウィルが紗音に嘉音を呼ばせて、紗音が拒否するシーンが記憶に残っています。紗音の態度が急変するところが怖かったです。

竜騎士07:ちょっとミステリアスなシーンですよね。『Ep6』の最後の方で、「紗音と嘉音は同一人物ではないか」という説がありましたが、その問題に対する作者側からの読者への問いかけというかアプローチというか、そういった演出です。 あの演出によって、なにかの情報が決定されたということはないですね。

朱志香が怪談の謎を解き明かすため、深夜の貴賓室に入るシーンで登場する人形は、とても怖かったです。 参考にした具体的なモチーフなどはあるんでしょうか?

竜騎士07:人形の絵は気持ち悪いですよね。具体的なモチーフはありません。西洋人形には王道的な気味の悪さがありますし、やっぱり、人型を礼拝するっていうのは、いつの世でも時代を越えてなんとなく薄気味悪い感じがあると思います。でも、実はあの絵の人形、フランス人形じゃないんですよ。 実際は普通のお人形さんです。

猫桜:写真では全く見えていないですが、とっても可愛くて「萌え」な感じですよ(笑)。

『うみねこ』に欠かせない!美麗な演出が持つ魔力

お茶会でウィルが世界を一刀両断したりしますが、ああいった新規の演出は皆さんがアイデアを出されたのですか。

竜騎士07: 私が「こういう演出にして」って指示を本文の中に書き込んで、演出の八咫桜さんに依頼する場合もありますし、彼が自己判断で演出を混ぜる場合もあります。

八咫桜:好き勝手やらせて頂きました(笑)。

お茶会で、 ベルンカステルが理御を別のカケラに連れて行った際、ウィルが切った画面がズレる演出がありましたよね。

八咫桜:あれは本編を読んだ時、これしかないと思いました。計算が大変でした(笑)。

竜騎士07:ナナメに画面がずれるのも、ちゃんと切れた形にあっていたし、よくできていますよね。 演出に関しては、八咫桜さんが色々考えてくれました。 やっぱり、 ユーザーにとって初めて見る演出っていうのはとても大事だと思います。演出にも処女性があって、初めての演出にはやはり魔力が宿りますね。しかも、できればそこ1回だけ使う演出にしたい。そうするとシーンが締まります。悔しいけど音楽もそうで、初めて聴く音楽はやっぱり盛り上がります。でも、音楽の場合は何度も同じ曲を流すことで、それはそれで別の役割を果たすようになります。 パブロフ効果といって、同じ曲をあるシーンで何度も流すと、ユーザーがすぐに「あ、今度はこういうシーンだな」と想起してくれるんですよね。逆に言えば、新曲は盛り上がる代わりに、ユーザーが「どういうシーンなんだろう?」って身構えちゃう時があります。 ただ演出はパブロフ効果がやりにくいです。何度も同じ動きが繰り返されると、今度はお笑いっぽくなってしまいますから。

なるほど。ところで皆さんは、演出の中で気に入ってるものはありますか?

猫桜:金の雪は素敵でしたね!

竜騎士07:あれは綺麗でしたね。

八咫桜:あの演出はその場の思いつきで、10分や20分で「これをやろう!」って考えて作りました。

餡豆:最初は金の雪じゃなくて、金の吹雪でしたしね。

八咫桜:そうですね。最初は雪が多すぎて、吹雪になっちゃってたんですよ(笑)。

時火:「ごめん、雪減らして!」って。舞台の演出も斬新で面白かったです。

各務:スポットライトがついていくシーンですね。あれは見ていて盛り上がりました。

八咫桜:作業した側としては、一番最初にウィルが出てきてから、ムービーに変わる辺りの演出は、印象深いです。「自分ならこのタイミングでムービーだ!」というポイントに合わせ、自分勝手に楽しく演出させて頂きました(笑)。

各務:演出では『Ep6』から登場した猫の目が思い出深いです。ウィルとベルンカステルのバトル時に表示される猫の目などは、最初は人の目でdaiさんが試作してたんですよ。

dai:まだ画像がなかったので、最初は人の目の画像を仮に配置していたんです。

猫桜:で、daiさんが何とか、人の目を加工して猫の目を作ろうとして。

竜騎士07:いや、無理ですよね(笑)。

餡豆:半日くらい頑張ったあと、「猫を連れてこよう」ってことになりました(笑)。

流石に無理でしたか(笑)。そういう風に、思いつきで演出を変えたりすることはけっこう多いんですか。

八咫桜:まあ、演出を思いついて実際にやっても、ない方が綺麗だと思い直す場合も多いです。実際に見るのと想像するのとでは、やはり違いますね。

『うみねこ』ワールドを彩る名曲の数々

今回、OPが『オカルティクスの魔女』から『霧のピトス』に変更されましたね。これはどうしてですか。

dai:実は、2010年の夏にラック眼力さんと『うみねこのなく頃に』の音楽CDを一緒に作ろうっていう企画があったんです。そのCDに、『うみねこ』という作品自体をイメージしたボーカル曲をふたりで合作して収録しようと話していて、それが『霧のピトス』の原型なんです。それで、一緒に曲を作って、とりあえず竜騎士07さんに聞いて頂けたらとお渡ししたら……。

竜騎士07:ちょうど私の方でもOPを変更したいなと思っていたところだったんですよ。というのも、『Ep5』と『Ep6』は、ある意味『古戸ヱリカ編』だったんですね。ミステリー側からの幻想側への反撃みたいな雰囲気です。だから激しめのOPにしようと思って、『オカルティクスの魔女」を使用しました。でも、『Ep7』からはまた次のテーマに移るので、OPも変えたいなと。でも、制作に何ヶ月も期間があるわけではないのでスケジュール的にも厳しいし、どうしようかなと悩んでいたところだったんです。曲のアイデアがなければこのまま『オカルティックスの魔女』でいってもいいかな、くらいに思ってたんですよ。そこに『霧のピトス』のプロトタイプがdaiさんとラック眼力さんから持ち込まれて。聞かせて頂いたら、『Ep7』のイメージにも合っているし、OPに使用しましょう、と。

『霧のピトス』は『うみねこ』という作品自体のイメージソングなんですね。

dai:最初はそのテーマで作りました。曲を作ってる時は、『うみねこ』の世界観を意識しつつ、自分たちなりに『うみねこ』という作品を表現できるような曲にしようと、ラック眼力さんとご飯食べながら相談しました。『うみねこ』は、作品自体が例えば志方あきこさんのOPであったり、多重コーラスなどを使った重厚なイメージがあったので、その雰囲気はとても意識しましたね。OPテーマに使ってもらえるということになってからは、竜騎士07さんと意見をすり合わせて、竜騎士07さんから頂いた曲のイメージに極力近づけるように、また方向性を模索しながらアレンジをさせて頂きました。

竜騎士07:私が求めている方向性と、daiさんたちが作りたい方向性とを、3回くらいすり合わせしたのかな。本当にいい曲になりました。最高のタイミングで作ってくれてありがとうございます。

そして完成したのが『霧のピトス』なんですね。

dai:OPに採用してもらったことで、本当に今年の運を全部使い切ったと思いました(笑)。「もうCD売れなくてもいいよねー」ってラック眼力さんと話してましたし(笑)。そのくらい本当に幸運でした。

今回、好きな音楽はありますか?

dai:個人的には『なまえのないうた』、エンディング曲が気に入っています。それからキャストロールで流れるztsさんの「the executioner」ですね。というか、好きな曲が多すぎます(笑)。

猫桜:あれはすごく格好よかったですね。

竜騎士07:私はxakiさんの『Ie4-octobre』か『I&d-circulation』かな。『le4』は平和な日常のデフォルトな曲だし、『l&d』は神秘的な曲で、ベルンカステルが出るたびに流してました。

なるせ椿:私はウィルが始めに登場する時の曲、『Rebirth』です。『Ep6』が初出の既存曲ですが、カッコイイ登場シーンと相まって印象深いです。

八咫桜:ウィルとクレルが一騎打ちするところで流れる『Golden Nocturne』が好きです。

各務:個人的には『霧のピトス』一択ですね。ムービー制作のやりとりで何回も聞いたというのもありますけど。特に、フルバージョンも先に聞いたので、「えっ、こんなに贅沢に作っちゃうの?」みたいな感じで、とても印象に残りました。

餡豆:『霧のピトス』、私も大好きですね。それから私は、ヤスが礼拝堂でチビ箒を探し回って、ベアトリーチェと初めて出会うシーンで流れる、ztsさんの『terminalentrance』が好きですね。

竜騎士07:ztsさんって、本当に曲の引き出しが多いですよね。今でこそバトルシーンで流れるような、激しい曲のイメージが強いですけれど、かなり幅広いジャンルを作曲なさってます。凪ぎ系の穏やかな曲から、不気味な曲まで本当に豊富で。ztsさんの不気味な曲って、『うみねこ』の世界観にぴったりなんですよ。

音楽家の方はインターネットで曲のやり取りをしているそうですが、皆さんご面識はあるんでしょうか。

dai:遠方にお住まいの方もいらっしゃいますが、面識は全員ありますね。

竜騎士07:音楽家の方って、けっこう交流熱心ですよね。

dai:「音」の話をするのが楽しいっていうところはあります。

竜騎士:07:音楽家の方たちは特殊な感性を持っていて、真似ができない感性だなと思います。サイキッカーというか、特殊超能力者、みたいな(笑)。音楽家をうかつに褒めると「いや、ここは全然ダメですよ」と返されたりする。褒めどころが難しい。

dai:いやいや、それはきっと、その場では嬉しくないみたいなフリをしてますけど、見えないところですごく喜んでいます。ガッツポーズしてますよ。私とか(笑)。

竜騎士07:(笑)。多分、音楽家同士じゃないとお互いの批評は難しいんじゃないでしょうか。どこかのマンガじゃないですが、「音楽家同士は惹かれ合う」感じなんですよね。音楽家同士にしか分からない部分を持っていると思います。だから私は、分からないものは分からないと開き直って「シーンに合うか合わないか、私が聞いて素直な感想でしか評価しません」と言っています(笑)。

dai:それが本当に婚しいですよ。

竜騎士07:だから、私が気にするのはクオリティじゃなくて、本編の場面に合うか合わないかの一点です。すごくパワーのある名曲でも、使えるシーンがないと不採用だったり。『ひぐらし』の頃は特にその思考が顕著で、そのシーンに合う曲なら、音質の悪いMIDI曲でも使いましたよ。まあ、かなり音割れもしちゃいましたけど(笑)。

では、まだ倉庫に控えている未使用の名曲があるのでしょうか。

竜騎士07:もちろんです。daiさんひとり取ってもたくさんありますね。特に『Ep5』、『Ep6』の頃はバトルシーンが多かったので、対ヱリカ戦や対ドラノール戦で格好良く流れていた曲の影に、お蔵入りになった曲がたくさんあります。まあ、お蔵入りとは言っても、遜色ない出来なので、今後使用する場合もあるかもしれませんが。

dai:でも、選択して使われなかった候補曲、もちろん私のものとか関係なしに、音楽家皆さんの候補曲はもったいないですね。

竜騎士07:そういう候補曲の存在は作品作りにすごく助かるだけでなく、世界観を作る際にも助けになっています。一例ですが、今回、xakiさんは物凄くたくさんの曲を提供して下さったんですよ。

dai:『Ep7』の制作期間だけで55曲です。

竜騎士07:すごいですよね。それに、どれもxakiさんのテーマがはっきりしていて、言わば『xakiワールド』が提示されている曲なんですよ。そこで今回、『Ep7』ではxakiさんの音楽を中心に世界観を作ってみようと思って、多めに曲を使わせてもらいました。xakiさんの曲は、テ〇リスでいうと変な形のピースです。バチッとハマる時は「これしかない!」って曲になるんですが、どんなにイメージが似てても、ちょっとでも曲調が違ったらハマらないんです。

dai:深い世界観をお持ちの方ですね。

竜騎士07:深いですね。個性がすごく出ています。変な話ですが、世界観をそれほど持っていない曲っていうのはどのシーンにでも使えるんですよ。xakiさんの場合は世界観がすごく深いので、なかなか入れられないのですが、ぴったりはまった時は「やった!」という気分になります。

『うみねこ』を振り返り最終話への展望

『Ep7』のラストシーンでは、縁寿が再登場しました。これはどういう意図なのでしょうか。

竜騎士07:『Ep8』へつながっていくイメージで、縁寿をラストシーンに出したんです。『Ep8』では縁寿がメインで描かれることが多くなると思います。この物語の直接の当事者は戦人とベアトリーチェですが、このふたりの確執の物語は『Ep6』、『Ep7』あたりで、ある程度決着がついている、ほぼ終わっているんですね。ただ、戦人とベアトリーチェがうまくまとまっても、まだ話が残ってるのは緑寿なんです。緑寿にとっての1986年の物語はまだ終わってないんですよ。『Ep8』では、縁寿にとってこの物語はなんなのかっていうところが、1つのテーマとして描かれると思います。縁寿が主人公かっていうとちょっと怪しいですが、縁寿がかなり重要な役割を占めるエピソードになることは確かです。

『Ep8』制作進行具合はいかがですか。

竜騎士07:今はまだ、中盤まで行ったとはお世辞にも言えないです。今まさに制作中、というところですね。

縁寿がメインで進行するとなると、天草たちの再登場も気になるところですが。

竜騎士07:すでに書いてるシーンでも、天草は登場していますよ。どう登場するかは、まだ言えませんが……(笑)。

須磨寺霞はどうでしょう。一部で人気が沸騰しているようですが。

竜騎士07:なんか、方向性が間違った人気のような気もしますけど(笑)。いえ、有難いです。再登場は、そうですね、須磨寺霞も含め、一度出たきりの変わった登場人物の再登場も、あるかもしれないような……気はしますけど、どうでしょうね(笑)。

物語の役割としての『Ep8』の切り口はもう決めていらっしゃいますか。

竜騎士07:先日『ひぐうみライブ(※2)』の時に言ったかもしれませんが、今回は最終話であると同時に、エピローグでもあるんです。先ほども言いましたが、戦人とベアトリーチェを巡る物語は『Ep7』の時点で既に終わっているんです。いえ、もしかすると『Ep6』くらいで終わっているかも知れませんね。ミステリや謎解きの目線から見ると、『Ep8』はすでに解き終わった後のエピソード、エピローグに当たるわけなんです。それでいて、『うみねこ』全体では最終話でもある。そんな不思議な位置づけのエピソードなんですね。なので、同じ最終話である『ひぐらし』の最終話と比べたら、また毛色の違う作品になると思います。ひぐらしの最終話は、それまでに登場した人物全員で力を合わせて悪をやっつける、みたいな、いかにも最終話っぽい話だったと思いますが、それに比べると『Ep8』はまた全然違ったアプローチになると思います。

『ひぐうみライブ』で、『Ep8』には選択肢があるかもしれない、という発言があったそうですが。

竜騎士07:そうですね。これまでの『うみねこのなく頃に』っていうのは、登場人物がやっている劇をユーザーが眺めているような話だったんですよ。つまり登場人物に感情移入するゲームではなかった。例えば、アクションゲームだったら、ユーザーは動かしている登場人物に感情移入というか、完全に自己投影しますよね。でもアニメを見ている人は、あくまで登場人物が織り成すお話を外から見ているわけで、自分自身がお話の中に入っていくわけではありません。『うみねこ』は後者で、主人公=ユーザーという見方をするゲームではなかったんですね。なので、『Ep8』では、できれば登場人物とユーザーをシンクロさせて、登場人物が決めるべき選択をユーザーに委ねて、自分が話の中に入り込む楽しさを味わってもらおうと思いました。それで、選択肢を出して、物語の結末を選ぶみたいなことが、生意気かもしれませんができるといいなあと思っています。でも、こう言ってて、別の仕様になったらごめんなさい(笑)。

2007年夏から始まった『うみねこのなく頃に』シリーズも、『Ep8』で最終話になりますが、最終話制作に際した心境や心積もりをお聞かせください。

竜騎士07:2007年か。長いですね、もうそんなになるんですね。

猫桜:やっぱり寂しい気持ちはありますね。それは我々だけでなく、皆さんそうだと思います。既にプロットなどに目を通していますが、最終話というよりはずっと続けて欲しい終わらせ方かな、という印象を個人的には受けました。『Ep8』をふまえて、ユーザーの皆様には「偽書」を書いて頂けたら嬉しいです(笑)。そして『うみねこ』をずっと好きでいてくれたら本望です。……あとは「締め切りを守ろう」という想いです(笑)。ちゃんと冬コミに間に合うように一同頑張ります。

餡豆:同じく寂しいですね。来年夏にも続編がもしかして出るのかな、と期待したいような感じの終わり方だと思いました。

時火:寂しさもありますが、正直に言って、素直に楽しみですね。

八咫桜:それはありますね。私の場合はすごくシンプルで、「どういう演出にしてやろうかな」っていう、そっちのワクワク感があります。

なるせ椿:『Ep8』ということで、今までの集大成がどうなるかっていうのは、本当に純粋に楽しみです。

dai:私も時火さんが仰られたように、楽しみです。『うみねこ』を振り返ると、本当に全てのスタッフが気合を入れて製作していた、そういう中で一緒に作業できたことが、単純に幸せだと感じています。

各務:『Ep8』は、07thExpansionが出す最後の『うみねこ』の世界かもしれないけれど、そこからストーリーを考えていくことができるかもしれません。また、『Ep8』が終わっても、きっとまだユーザー自身も迪り着いていない答えもあると思うので、最終話の後でも考えて楽しんでもらえたらいいなあと思っています。そして、そうなるように私たちも頑張って作りたいです。

竜騎士07:私的には、「もう4年経っちゃったんだ」って気持ちと、「4年って長かったな」って気持ちと、「最終話さえ書かなければいつまでも『うみねこ』を書いていられるんじゃないか?」っていう気持ちと、「もう『うみねこ』は終了してしまって、次の話を書きたい」って気持ちと……そんな、色々な相反する気持ちが混ざっていますね。『ひぐらし』の時もそうだったんですよ。《ずっと『うみねこ』を書いてる竜騎士07》と、《他の話を書いてる竜騎士07》に分身して、両方やれたらいいのになって思います。まあ、今回の話を最終話と決めていましたから。しっかり書き切って、また次の話を作っていけたらいいなあと思います。寂しくもあるんですけど、これはもうケジメなので。お別れ、卒業みたいな感じですね。『うみねこ』で学んだことを次へ生かしていけたらいいなあと思っています。

本日はありがとうございました。

(2010年10月吉日・都内某区民館において)

※1ポートピア殺人事件:

1983年にエニックスより発売されたアドベンチャーゲーム。当時、ゲームを取り扱ったテレビ番組で芸能人が「犯人はヤス」と、真相を暴いてしまい、クリアしていなかったユーザーをがっかりさせた。その後「犯人はヤス」というフレーズだけが一人歩きし、ミステリなどで真相をばらす際のキーワードとして有名になった。

※2ひぐうみライブ:

『ひぐらしのなく頃に』および『うみねこのなく頃に』のファンのために行われているライブイベント。『ひぐらし』『うみねこ』の制作に参加した音楽家のライブや、竜騎士07氏のトークイベントなどを行っている。