This is the OCR’d Japanese text from the interview part of Episode 2 Shinsou Kaimei Dokuhon.

Contents include:

  • Interview with 07th staff: Ryukishi07, Yatazakura, BT, and dai after the release of EP2
  • Interview with Alchemist staff: Takahito Ekusa, artist behind the original Umineko portraits; and Shigeru Nakagawa, producer at Alchemist
  • Umineko Chronicle, a release timeline for stuff like manga, magazine interviews, and others at this point
  • Umineko Exhibit Report, a brief overview of an art exhibit and talk Ryukishi did at the Poisson Rouge Goldfish Teahouse after ep 2’s release

~うみねこ制作秘話~

『うみねこのなく頃に』を作った男たちEpisode2

『Ep1』以上にベアトリーチェの圧勝で終了した 『Ep2』。奇想天外のファンタジックな演出や、今後の展開についてお聞きするため、07th Expansionの方々にインタビューを激しました。

『Ep2』制作終了後の感想と苦労点

例年より厳しい修羅場を迎えたという『うみねこのなく頃にEpisode2(以下、『Ep2』)の制作ですが、今、当時を振り返られてどのような感想をお持ちですか?

BT:とにかくギリギリでしたね。ニコニコ弾幕作るのは楽しかったけど(笑)。

竜騎士07:(笑)。BTさんは、システム的な部分で苦労していましたよね。

BT:そうですね。弾幕とか、Tipsで煉獄の七姉妹が見られる、裏モード(※1)があるんですけど……。

竜騎士07:見た目よりも作りが複雑なんですよね。苦しみながらも、よく頑張ったと思う。

BT:でも、ああいう仕組みを作るのは楽しいんですよね。だからギリギリだけど、楽しい修羅場でした。

竜騎士07:MUSICBOXでも演出(※2)で色々遊んでくれて(笑)。独壇場でしたよね。

BT:やっている内に「ああいうのも入れたい、こういうのも入れたい」ってなってくるんです。

紗音が立っている所に、譲治が図面端から出てきて、上下に揺れながら通り過ぎていくのには笑ってしまいました。

竜騎士07:それは「Towering_cloud_in_summer」の演出ですね。

BT:個人的に気に入っているのは、ランダムでキャラの表情が変わることなんですよ。(数人のキャラが)ありえない表情の組み合わせをしていると、笑ってしまう(笑)。

竜騎士07:ドラマ性があっていいですよね。

BT:『うみねこ』はキャラの表情が豊かなので、3人並んで表情が組み合わさると自分なりの物語が頭に浮かんでくるんですよね。そういう所は、楽しんで作れました。

ベアトリーチェの顔は、よく動きますよね。

BT:立ち絵と表情を組み合わせる作業は私が担当しているんですが、彼女に関しては首の角度を3回ほど直したんですよ。

竜騎士07:私がわがままを言ってしまって申し訳ない(笑)。表情がどうも首の座標と合わなくて、何度もリテイクをお願いしました。

BT:いえいえ。それだけこだわりがあって、アクがある表情だってことじゃないですか?竜騎士07:そうですね(笑)。あとBTさんに助けられたのは制作の終盤。納期のラスト1週間に入ったときに、BTさんのチェックが入るんですよ。「ここはまだできてない」「ここは未検証」とか、冷静に洗い出しをしてくれる。残り48時間の段階になると、私から「次何やるの?」って聞いてました(笑)。

司令塔のようですね。

BT:そんな中、デバッグで細かいミスを拾ってくるのがdaiさん。

竜騎士07:後からヒョロっと来て、デバッグすると「あの、これは仕様でしょうか……」って言ってくるんですよね(笑)。

一同:(笑)。

竜騎士07:「演出かとも思ったんですけど」とか言われるんですけど、そんなわけなくて(笑)。良いバグを引っ張ってくるんですよ。

BT:今回は凄いバグありましたよね。『Episode1』(以下『Ep1』)でTipsを見た後、ゲーム本編に戻って進めると、キャラの立ち絵がそれぞれのアイコンに変わるんですよ。

竜騎士07:あれが出てきたのはラストのラストでしたよね。「何だよこれは!?」ってかなり大騒ぎしたのを覚えています。

それは真っ青になったでしょうね。

BT:いや、笑いました。シュールすぎて(笑)。

一同:(笑)。

八咫桜さんは(『Ep2』制作において)どこで苦労されましたか?

八咫桜:やっぱり嘉音ブレードと紗音バリアかな(笑)。あと、ベアトリーチェの背景になっている蝶ですね。最初、間違えて蝶が飛んでいる方向を逆にしてしまったんですけど「こっちの方が良いじゃん」ということになって。

竜騎士07:あれは試行錯誤でしたね。急に出てきた新仕掛けなので、私もスクリプト上で対応するのが苦労しました。

なるほど。daiさんはいかがでしょう?

dai:BTさんが言うように、ギリギリの状況だったので皆の仕事がどうすればうまく回るか考えました。その結果、買い出しを率先して引き受けました(笑)。(笑)。音楽制作で追い込まれることは無かったのですか?

dai:音楽は、ある程度前段階から音楽家さんたちに提出して頂いていたし、pre-holderさん(※3)が中心となって音楽合わせをやって下さったので……。

BT:謙遜しなくて良いですよ(笑)。BGMの音量調節をやってもらっているし、今回Ogg(※4)に変えたので、データの変換も行ってもらっていますし。

竜騎士07:あとdaiさんの役割で大きいのは、『うみねこ』に関わっている音楽家さんたちの連絡や統制をやってくれたこと。音楽部門の統括役ですよね。BGMも音楽家さんたちによって音量が全然違っていて、それを平均的に統一するのは私たちには無理です。

難しいですよね。竜騎士07さんは『Ep2』の)制作を振り返っていかがですか?

竜騎士07: 進行が遅れてごめんなさい(笑)。

一同: (笑)。

竜騎士07: 1回、体調崩してしまったのが良くなかったんです。夏コミが終わった後、映画の撮影などに立ち会っていて、それが終わって「そろそろやろうかな」ってときに、疲れが出て2週間位寝込んでしまったんですよ。これが痛かった。2週間も寝込んだら、体力もモチベーションも下がりきっちゃって、エンジンかけるのに凄い時間がかかって。結局その後丸3週間は、ボヤ一ツとしてました。9月が終わりかけてきた頃、私が大騒ぎして、10月頭に作業場に泊り込みを始めました。最初は全てが1ヵ月遅れだったんですけど、12月に入ったら1週間遅れになって、最後の方では3日遅れになりましたよね。

スケジュールを詰めていったわけですね。

竜騎士07:ええ。最終的には追いついて。忙しかったんだけど、やりたいことで遠慮したことは、1つも無いんですよ。思いつきは全部詰め込んである。

BT: だからテンションは維持できました。

竜騎士07: 時間は無いんだけど、やる気と気力はあって。煉獄の七姉妹も全部描ききったし。煉獄の七姉妹なんて、文字だけでも良かったんですよ。でも、立ち絵を描いたことでモチベーション上がりましたよね。

BT: めちゃくちゃ上がりました(笑)。

一同: (笑)。

竜騎士07: だから今回は本当に時間がカツカツで従来に無い修羅場だったけど、濃密な修羅場でした。中だるみの余地もなかったな。

メディアがCDからDVDに変わったことで、影響はありましたか?

竜騎士07: DVDはCDと仕様が違うので、マスターROMを提出した際、工場からかなりの再検証を求められました。また、CDと違って納入時期が軽減されることも無いので、大変でした。BTさんが信頼できる作業用ソフトを探したり、準備が色々ありましたね。

BT: DVDへの変更で一番怖かったのは、納期が早まることでしたね。

竜騎士07: そう。DVDになったら納期が2週間早まると聞いて、それならCD-R2枚組にしようと話していたんだけど……。

BT: 時代の流れを考えるとスマートではない。

竜騎士07: 音楽を劣化させる話も出たけど、ほとんど容量が減らない。何も削るところがなくてDVDにしたんですよね。結果的に致命的トラブルは発生しなくて良かったけど、唯一超えられなかった壁が単価。DVDになって単価が上がったので、ゲームの値段も上がってしまいました。でも、これで二度と容量を気にせず作品制作ができるようになりました。

『うみねこ』の制作姿勢とユーザーの評判あれこれ

『うみねこ』を『Ep2』まで作り終えて、今までと制作姿勢の違いなどはありましたか?ポワソンルージュ金魚茶屋(※5)のトークイベントでは、『ひぐらし』と『うみねこ』では作家としての立場や、姿勢の違いが出てきたという話をされていましたが?

竜騎士07: 制作姿勢に関しては無いですね。『ひぐらし』から何年もやっているので、完全に手探りの時期は抜けています。ただ、世間の注目度は変わってたことによる影響はあると思います。『ひぐらし』の初期は無名だったのでゲリラ的に活動していましたが、『うみねこ』は最初から注目された状態でスタートした。『ひぐらし』のときは問題にならなかったことが気になるようになった、という相違点はあります。期待されていなかった作品の評価と、最初からマークされている状態で出す作品とでは、周りの求めるものも、こちらの姿勢や心構えも変わってくる。プレッシャーは強かったかもしれません。でも私は物作りをしてるのが楽しい。世間がどうこうじゃなく、作っていて楽しいかどうかが大事なんです。そういう意味でいうと、『うみねこ』、特に『Ep2』は作っていて楽しかったですね。『Ep3』も、作っていてかなり楽しい作品です(笑)。

(笑)。『Ep2』発売後、ユーザーの反応はいかがでしたか?

竜騎士07:『Ep1』のときよりも、はるかに反応が良かったですね。

八咫桜: 嘉音ブレードとか(笑)。

竜騎士07: 反応して欲しいところできっちり反応してくれたので、良かったな。

序盤からベアトリーチェが出てきたのは、インパクトありました。

竜騎士07『うみねこ』では前作の反応をすごく見ているんですよ。『Ep1』のときのユーザーからのツッコミで、19人目がいると言ってもどうせいないんだろう、というのがあったので、『Ep2』では玄関から堂々と入らせました(笑)。『ひぐらし』はユーザーの反応を見ない、粛々と話をする作品だったけど、『うみねこ』はユーザーの心の拠り所を冷静にサーチして、そこを切り崩すような作品なんです。だから『Ep2』が反響が大きかったときに、狙った通りだと思いました。最近はこうやればユーザーの心理状態が上がる、こうやれば下がるだろうというのが分かります。『ひぐらし』の解答編のときにはまだおぼろげだったけど、『うみねこ』に入ってからかなりはっきりと見えるようになってきました。

ベアトリーチェの赤文字も、仕掛けの1つですか?

竜騎士07: そうですね。『うみねこ』は虚飾に彩られた世界なので、ファンタジーの一面もあればアンチファンタジーの一面もある。ミステリーもあれば、アンチミステリーの一面もある。赤文字システムはアンチミステリーなんです。赤字が出てきてそれが本当なら、白字は全部ウソなのか、という気分になりますよね。これは、ゲームならではの表現だと思っています。ミステリーとしては冒険的なことができたかなと。

赤文字は、真実だと受け取って良いのでしょうか?

竜騎士07: 困っているのはそこなんです(笑)。真実だと誰が証明できるかと。

信憑性を疑っているユーザーもいますね。

竜騎士07: ベアトリーチェが言っているから信用しないのかな。ベアトリーチェは、ユーザーにとっては敵ですよね。だから信用できる人物…….ベルンカステルあたりに赤字を使わせようか傷んでいます。

戦人とベルンカステルの交流が見られるかもしれないですね。

竜騎士07: そこはノーコメントで(笑)。

(笑)。では、今後赤文字のようなルールを追加していく予定は?

竜騎士07: 評判が良かったので、似たようなことがやれたら良いとは思います。青字とか緑字とか黄色字とか(笑)。あまり複雑にすることもないし、良いアイデアがあったら取り入れていきたいです。

期待しています。評判の話に戻りますが、公式掲示板での反応はいかがでしたか?

BT: やはり赤文字が入ったことで、推理範囲が絞られたみたいで、書き込み内容も絞られたものが増えましたね。

嘆きの声もありましたか?

BT: そうですね。「俺の推理が全部崩れちゃってる」って(笑)。

竜騎士07: でも『Ep2』の段階で結論を求められたり、評価を決定されるのは少し困りますね。『ひぐらし』で言えば、『綿流し編』の時点で全てを語られるようなものじゃないですか。『綿流し編』の真骨頂は、『目明し編』を読んで決まるんですよ。『Ep2』だけだと、『綿流し編』を読んだだけで「詩音が可哀想。魅音が犯人ですね」と、話を終わらされているようなもの。今回は一話一話が注目されているから、対になる話のセットではなく、個々で断定的な評価がされてしまう。1年後か2年後かに出る、対になるシナリオで真相を明かすんだよ、という展開を想定していた場合、評価が誤ったまま固まってしまう可能性がある。そういう意味で、この赤文字演出は非常にリスキーな演出だと思いました。だったら1話ずつじゃなくてまとめて出せば良いとなると、4年に1本のリリースペースになってしまうわけで。どれだけの大作なんだと(笑)。

1話ずつ出すことによって、ライブ感は出ますよね。

竜騎士07: そうですね。繰り返しになりますが、『うみねこ』は前作のプレイヤーの反応を見て、魔女が次の一手を打つという展開があります。どうか長い目でお楽しみ下さい。

反応と言えば、つるぺったん(※6)が出てきますね(笑)。

竜騎士07: ああいうのは、同人ならではですよね(笑)。学園祭で朱志香が普通に歌ったらそれはそれで素敵だけど、シーンはすぐに終わってしまう。だから、つるぺったんを使いたいと思ったんです。あれで朱志香のキャラが一気に地に足が着いた感じになった。

竜騎士07さんからSilverForest(※7)さんにオファーをしたんですか?

竜騎士07: そうです。あれは11月頭で、かなり末期の頃でした。断られたらどうしようかと思いましたが、Silver Forestさんから相当早い段階でお返事があって、ご好意に甘えることができました。それで、当時内輪でニコニコ動画(※8)がブームになっていたので、弾幕も作ろうと(笑)。

ネタ的なところだと、他にも楼座の「前へ出ろよォオオオオ」あたりのセリフが某掲示板で流行っていますね(笑)。

竜騎士07: あの手の名台詞って何が流行るか、それだけは分からないですね。意識した台詞はスルーされるのに、無意識に書いた台詞がやたら引き合いに出されたり(笑)。

一同: (笑)。

キャラクターの役回りの変化と追加要素

今回、前作に比べると紗音や譲治など脇役だったキャラの活躍が増えています。これはなにか意図があったのでしょうか?

竜騎士07: 登場人物が18人もいるので、『Ep1』では見せ場の無かったキャラによる物語の側面や、キャラ同士の化学反応を見せたいと考えました。毎回違うキャラを取り上げられたら良いなとは思いますが、立ち絵があるキャラ全員に活躍の場が与えられるかというと、それは誤解です。ただ、立ち絵があるとキャラが膨らんで、出番が無いともったいない、というジレンマに陥るんですよね。だからキャラに当てるスポットライトを分散するか、集中するかはすごく悩みます。

郷田は今回、良い人になっていましたが。

竜騎士07: 郷田は人気投票で明らかに下位だったので、どうにかプッシュできないかと考えました(笑)。それで、「ここは俺が防ぐからお前たちは先へ!」というのがあれば良いよね、ということで見せ場を作ったんです。最初は郷田がドアを押さえるんじゃなく、夏妃の部屋へ行く途中の廊下で防いでくれる話にしようと思ったけど、廊下に死体があると密室が成立しない。密室殺人で全てを終わらせたいという美徳があったので、ドアの内側に追い込みました。なので、郷田プッシュについてはプロットの段階から意識していましたね。

BT: 人気投票の順位も上がりましたね(笑)。

皆さんが個人的に活躍して欲しいと思うキャラはいますか?

八咫桜: 金蔵さんかな。

竜騎士07: 金ちゃん十分目立ってる。たまに出てきて喋るだけで笑える(笑)。

BT: 私は真里亞ですね。

竜騎士07: 真里亞は見るからにキーパーソンですからね。目立たせると話が解答編に入ってしまう…。

BT: 魔法少女に変身とか。

一同: (笑)。

BT: でも『Ep1』と『Ep2』ではキャラが変わりましたよね。『Ep1』は「きひひひ」という不気味な面が印象的だったけど、今回はどちらかというと親の愛が欲しい、という感じが強いですから。

竜騎士07: まだ出題編なので、全員にまんべんなくカメラを向けられたら、と思っているんですが、なかなか難しいですね。

まだスポットを浴びていないキャラクターもいますね。

竜騎士07: 大人勢なんてほとんど浴びてない。皆、最初に殺されるし。彼らは情報をダントツに持っているので、生かして使うことはベアトリーチェにとって非常に難易度が高いんですよ。『うみねこ』ってプレイヤーに対する難易度以外に、ベアトリーチェにとっての難易度もあるんですよね。ベアトリーチェにとって思い通りの展開を進めるためには、彼ら大人勢は右代宮家のことを知り尽くしており、行動力もあるので手強い。1ターン目に全滅させておくことは初手としてかなり重要なんです。もしも、大人を1ターン目に生かして事件を最後まで遂行することになったら、ベアトリーチェにとってはかなり難易度が高い展開になると思います。殺人方法も、予告されてない最初の殺人が一番楽ですし。ただ、『Ep3』では大人勢の出番を少し増やそうかと思っています。2日目は生きてない人もいるかもしれないので、初日の夜を熱くしてね。

daiさんの好きなキャラは?

dai: 楼座と真里亞が、もう少し普通に幸せになってくれれば、と思います。

八咫桜: 楼座が変形するとか、真里亞を搭載して合体変形するとか?(笑)

一同: (笑)。

竜騎士さんの応援したいキャラは?

竜騎士07: 個人的には戦人を推したいんだけど、推せば推すほど解答編になってくるので(笑)。出題編で戦人をかっこよくするのは困難なんですよ。大活躍したら話が終わっちゃうから。(探偵の)金田一も、事件をかぎまわってるときには見せ場は無いですよね。犯人を問い詰めるところが見せ場になる。その見せ場はつまり、解答編なんです。

前回のインタビューで、嘉音を「俺の嫁」と言っていましたが。

竜騎士07: 今はベアトリーチェが可愛いな。典型的なツンデレじゃないですか。まだデレてくれないけど(笑)。そうですね(笑)。ちなみに今回、ベアトリーチェ以外にも『ひぐらし』でおなじみの魔女たちが登場しますが、『ひぐらし』と『うみねこ』は密接に関わっているんでしょうか?

竜騎士07:『ひぐらし』を知っている人には、楽しんでもらえるボーナスキャラクター程度のニュアンスですね。特につながりを意識しなくてもいい問題です。

劇中劇のように、戦人とベアトリーチェが言い争いをしている場面については?

竜騎士07: これは苦しいなあ。「皆さんはどうお考えですか?」と私が聞きたいぐらい(笑)。

(笑)。他に新キャラだと、『山羊の家具』が出てきますよね。

竜騎士07: あれは、「カイジ」で言うところの黒メガネです(笑)。

一同: (笑)。

煉獄の七杭の擬人化については?

竜騎士07: 今の時点では、趣味としておきましょうか。

(笑)。既存のキャラだと、嘉音のブレードを見てからは他の似たポーズを取っているキャラも剣を出すように見えるのですが。

BT: 郷田は出すんじゃないかと(笑)。

竜騎士07: 出しても良いけど、色々と作業が大変ですよ(笑)。

ちなみにブレードの色は、敵と味方で分かれていますね。

竜騎士07: ビームサーベルと同じで、敵と味方で変えています。「スターウォーズ」に倣って、味方は青か緑系、敵は赤か紫系にしようかとも思ったんですが、単純に赤がかっこよかった。『うみねこ』の世界は、黒、赤、金がキーになるイメージカラーになっているんです。そのカラーに則ると、使用人の場合、黒じゃ服の色と同じだから剣が見えないし、金は派手過ぎていまいち。三原色が良いということで、高音の剣は赤になりました。敵が紫というのは、三原色のどこにも所属しない不気味なイメージということで決めました。

最後の追加要素として、『Ep2』では礼Page 5拝堂など新しい舞台が増えましたね。

竜騎士07: 増えたというより、元からあるんですけどね。あの館には色々な施設があるけど、それらを一度に出しても覚えきれないと思うんですよ。だったら、そのエピソードで関わる所だけ出して、キーになる場所が少しずつ増えていけばいいと思っています。

daiさんの曲は、心の美しさの表れ?

音楽についてdaiさんにお伺いします。竜騎士07さんからは、どういった感じで曲が発注されるのですか?

dai: 今回はこういった話の方向性になるので、こういった感じの曲を……という感じですね。あとは、音楽家さんたちに各々のイメージで制作して頂いています。

『Ep2』のときは、どんな方向性になるというお話でしたか?

dai: 『Ep1』が人間裁判の話なら、『Ep2』は魔女裁判の話、というニュアンスでした。

BT: 他には、効果音の話もしましたよね。ライトセーバーで戦う音とか(笑)。金属音じゃないけど、それに近い感じで、という。

竜騎士07: 効果音系は毎回苦労しますね。曲は「こんな感じ」といえるけど、音は伝えるのが難しい。

BT: こちらの提案とは逆に、daiさんの曲からストーリーが生まれることもありますよね。

竜騎士07: あったあった。特に『ひぐらし』の頃は多かったですね。『うみねこ』になってからも、daiさんの曲は奥行きや世界観が素晴らしいので、曲から作品が膨らむことが往々にしてあります。

『うみねこ』の音楽制作で、こだわりなどはありますか?

dai: 正直言って、ようやく最近『うみねこ』の正確なイメージが掴めてきたので、確固たるこだわりはありません。ただ、そういったものとは別の所で、どんな世界観でも音楽で感情そのものを感じて頂けたら、とは思います。

(daiさんの曲から)悲社感や感情の揺らぎは、すごく感じられます。

dai: 今はおどろおどろしい曲などを勉強していきたいと思っています(笑)。

BT: daiさんの作る曲は、きれいな曲が多いですよね。

八咫桜: daiさんの心のキレイさを表してる。

一同: (笑)。

ちなみに『ひぐらし』のときと、制作での相違点を感じることはありますか?

dai: 変えていかなければいけないことがある、というのは感じます。『ひぐらし』は和風だったり、人情的なところが全体の空気としてありましたけど、『うみねこ』はああいった洋風の話なので、空気感を『うみねこ』に合う形で作っていかなければならないと思います。

どちらの方が作りやすいですか?

dai: まだ何とも。素材のままというか、ある種飾らない形で出せるのは和風です。洋風は、中身はあるけどちゃんと洋風の料理というか、いろいろ飾られているというか……うまい表現が見つかりませんね。

なるほど。ちなみに音楽家さんごとに、曲のジャンルの割り振りなどはあるんですか?

dai: 決めてはいませんが、それぞれ皆さん、得意なジャンルで勝負されていますね。

竜騎士07: 人によって個性は様々ですね。

書き下ろしについてと次回作の意気込み

今回、本書で掲載させて頂いた特別書き下ろし「魔法についての重要事項」(P1~5)ですが、何やら意味深な内容ですよね。これはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?

竜騎士07:『Ep2』は「Turn of the goldenwitch」というサブタイトルがあって、魔女寄りな事象が話の中心でしたが、魔女の根幹である、魔法という奇跡についてあまり語る機会が無かったんですよね。ビジュアル的に怪物が出てきたり、派手な魔法が飛び交ったりそういうシーンばかりで、「そもそも魔法とは何ぞや?」ということについて触れていないんですよ。それを補足したいと思って書きました。

事件の真相が垣間見えてくるようなヒントが含まれているのでしょうか?

竜騎士07: ヒントになる人にはなるし、騙される人は騙される(笑)。本編のTipsも、本編が全て終わってから見た方が面白いですよね。そういう意味なのか、って理解できる。今回の書き下ろしも、今の時点で見ても抽象的なきれいごとにしか見えないかもしれません。でも、全てが終わった後に読み直してもらうとTipsのような価値があるんです。

最後の手記(P4~5)のようなものは、ベアトリーチェが書いてるのでしょうか?

竜騎士07: そうですね。『Ep1』で戦人が「魔女であることを認めて欲しかったら、出てきて魔法を使えばいい」と言っていたりしますが、ベアトリーチェ側からすると人前で魔法を使え、というのは暴言なんですよね。人前にさらせるような魔法の力は確かにあるけど、魔法は神秘的なもので簡単に見せられないんだよ、みたいな(笑)。

なるほど。

竜騎士07: 重力を説明しなくても、木からリンゴが落ちるのと同じなんですよね。でも戦人は、リンゴが落ちるなら理由がある、それを教えろと騒いでる。すると、魔女は困ってしまう。「だって重力があるし」って(笑)。というのは余談ですが、珍しくベアトリーチェが落ち着いて知的なお話をされているので、楽しんでいただけたら幸いです。

分かりました。では最後に、『Ep3』についてのお話です。主人公はまた戦人なのでしょうか?

竜騎士07: 戦人のつもりですが、スポットライトの当たりようによっては、戦人以外のキャラがクローズアップされることもあるでしょうね。

物語の難易度や内容については?

竜騎士07: 難易度は、正直難しいです。前から言っているように、『うみねこ』はミステリーなのか、ファンタジーなのかというのを見て欲しいんです。『Ep1』ではミステリー、『Ep2』では完全にファンタジー寄りだったけど、次は三角形のてっぺん。第1話は点だった。第2話でその2つのお話をつなぐ線になった。第3話でさらに点が増えて、線が図形になった。第3話はファンタジーとミステリーの中央に来る作品になるといいかな、と考えています。ミステリーとして見ている人にはいよいよミステリーに、ファンタジーとして見ている人にはファンタジーとしてさらに完成する、みたいな。物語のさじ加減は、次回が一番難しいんです。物語的な面白さを持たせたまま、精密作業で(ファンタジーとミステリーの)評の均衡状態を調整しなければいけない。プレイヤーじゃなくて、私にとっての難易度が一番高い(笑)。

一同: (笑)。

竜騎士07: ベアトリーチェにも難易度が高いです。戦人も知恵をつけて状況が分かってきているから、同じトリックを繰り返したらいい加減気づきますしね。でも、ベアトリーチェもまだ切り札を残しているんです。

『ひぐらし』のとき同様、ルールに関してどこまでがXでどこまでがらっていうことを考えて読んでる方がいますよね。

竜騎士07: そうですね。『ひぐらし』を経験されている猛者の方は、今回の話も特殊なルールが入り組んでこういう現象が起こってるんだろう、と考えていますね。それは正しいと思う。この世界もゲーム盤的世界で、そこにはいくつか駒の動きのルールと、ゲーム盤全体を統括するルールみたいなものがある。それらを探ることは、物語の不思議な回答に近づく鍵になると思います。

システム面で改良が加えられる点はありますか?

BT: 音量調整など、色々な新しいシステムは作っていますが、目立つところはまだ着手していません。作ってるうちにTipsが増えていくという(改良の)可能性はあります。

八咫楼: 私もまだシナリオを完全には把握していませんが、どんな楽しい演出ができるか、わくわくしています。

音楽に関しては?

dai: 現時点で、すでに素晴らしい新曲を送って頂いている方もいらっしゃいますよ。私の魂の込もった曲も楽しみにして頂けたら嬉しく思います(笑)。

最後に竜騎士07さん、お願いします。

竜騎士07『Ep1』や『Ep2』は好き放題でやりやすかったけど、『Ep3』からそろそろ着陸のことを念頭において、精密な作業が必要になってきます。楽しい作品を作ろうと意気込む反面、急にシナリオを書く難易度も上がってきている。その難易度も楽しんでいます。『Ep3』の難易度は非常に高めですが、私も悩んでいるので皆さんも悩んでください(笑)。あと、『Ep2』では制作途中の画面を日記で公開できなかったので、今回はそれができればと思っています。

BT: 楽しみです。プロット開くだけでワクワクするし。

私も楽しみです(笑)。今日はどうもありがとうございました!

(2008年4月吉日・都内某ホテルにて)

Bios

■竜騎士07

07th Expansionの創設者にして、「うみねこ」の産みの親。ゲーム制作以外にも『ひぐらしのなく頃に』や『ヴェロキア竜騎兵物語』など、文筆業でも大きな活躍を見せており、近年では有名ゲームブランド・Keyの最新作「Rewrite」のシナリオに携わっている。

■八咫桜

07th Expansionの中心メンバーの1人で、竜騎士07氏の実弟。「うみねこ」では演出やプログラムを担当している他、ゲーム内に登場する背景の撮影なども行っている。どんな困難でも気合で乗り切る、非常にエネルギッシュな人物。

■BT

07th Expansionの中心メンバーの1人。『うみねこ」ではシステムやプログラムを担当している他、公式掲示板の管理人も務めており、サークルのブレーンとして活躍。ゲーム制作が修羅場に入っても周囲を和ませることを忘れない、ムードメーカーでもある。

■dai

07th Expansionのメンバーの1人。元々は『ひぐらし』の1ファンだったが、BGMにフリー素材を使用していたことに関して提言したことがきっかけで、制作に参加。「you」などの名曲を生み出す。『うみねこ』では音楽総監督の他、デバッグも担当している。

Footnotes

(※1)Tipsのモード

タイトルメニューから「Tips」->「Ep2」を選択後、キャラクターの相関図の右下にある、「Next」をクリックすると現れる画面のこと。従来のキャラクター紹介と違い、真里亞が道に力を与えるエンチャント能力に長けていることなど、ファンタジーに関する記述が中心になっている。本編では2人しか出てこなかったの七姉妹のグラフィックが全員分見られたり、「家具」たちの裏設定(?)が読めたりする非常に貴重なモードだ。ちなみに、「山中の家具だけはなぜか除外されている。

(※2)MUSIC BOXの演出

劇中の曲を聴きたいときに便利なMUSIC BOX。曲名をクリックするとBGMと共に、キャラクターの絵が表示されるが、実はこの絵の組み合わせや動きには変わったものがある。試しにクリックして確かめてみよう。

(※3)pre-holder氏

『うみねこ』のBGMを担当している音楽家の1人。「Ep2」では「終焉_VerC」など、荘厳で恐怖感を得るような曲を制作している。

★pre-holder氏のホームページ「かきくけこの部屋」

http://www.geocities.jp/preholder_137/

(※4)Ogg

フリーの音声ファイルフォーマットで、データを符号化及び復号化する装置をする役割を果たす。

(※5)ポワソンルージュ金魚

東京千代田区にあるカフェレストラン。店内の一部が「Ep2」の背景として使われており、「うみねこのなく頃に」展が開かれた場所でもある(詳細はP.110の「うみねこクロニクル」を参照)。

(※6)つるぺったん

同人ゲーム「東方」シリーズのBGMを中心にアレンジされた楽曲で、SilverForestから発売された「東方「奏楽」に収録されている。歌詞には「オヤシロさま」など、「ひぐらし」に関わる用語も含まれている。

(※7)Silver Forest

同人音サークル、上記の「つるぺったん」など、「東方」シリーズのアレンジCDを中心に制作している。

(※8)ニコニコ動画

株式会社ニワンゴが運営している動画配信サービス。会員登録制になっており、アップロードされた動画に対してチャットのようにリアルタイムでコメントがつけられるのが最大の特徴、アニメやゲームなど様々なジャンルの動画が投精されており、『うみねこ』の動画も多数存在する。

Alchemist Interview

~うみねこ制作秘話2~

株式会社アルケミスト中川滋さんと江草天仁さんに聞け!

『うみねこ』と緑の深い方々にインタビューを行うこのコーナー。

今回はベアトリーチェの肖像画絵師・江草天仁さんと、江草さんの紹介者であり、 PS2版とDS版の『ひぐらし』を手がける中川遼さんに話を伺いました。

ゲーム制作のきっかけと竜騎士07氏の印象

まず、お二方の創作活動のきっかけや会社に入社された経緯をお教え下さい。

中川: 私はあるきっかけで会社がゲームを扱うことになって、そこで初めてゲームに触れました。と言っても、開発ではなく、小売の出身であることを生かしたお店との折衝役ですね。またゲームと言っても少人数でいきなりオリジナルの作品は作れないので、他社のPCゲームの移植を手がけたりしている内、竜騎士07さんともご縁ができました。

具体的にはどのようなつながりで?

中川:『暇潰し編』が発売された頃、フロンティアワークス(アニメを中心とした音楽や映像の制作販売会社)の方から『ひぐらし』のアニメやるという話を聞きまして。メディア展開の一環として、ゲームも、というお話を頂きました。

なるほど。江草さんの入社経緯などは?

江草: 僕は最初、絵とは縁遠い大学にいました。それがサークル活動でコミケに興味を持って出るようになって、雑誌のコーナーにも絵を描いたりするようになったんです。そんなときアルケミストの方に「バイトしないか?」と声をかけられまして。最初はとにかく絵が描ける人が欲しい、という感じだったのですが、ある日「ゲームを作るよ」と言われて、「あれ?」というやりとりが積み重なる内に……。

中川: PCのメーカーさんによくあるパターンじゃないですか。みんな家族、みたいな(笑)。

良い出会いですね。ちなみに竜騎士07さんの第一印象はどのような感じでしたか?

中川: 頭の回転が速くて、パワーがありましたね。年に2回しかないコミケで作品を発表する、自身の縛りも守っていらっしゃるし、人間的に素晴らしい方だと思いました。

江草: 私も同じで、すごく頭の回転が速いというのが第一印象でしたね。お話を聞くと、考えていることが1.5倍くらいのスピードで流れているような感じ(笑)。こちらは一生懸命反芻して噛み砕かなきゃなと思うんですけど、本当にお話が面白い方。勉強になるなと、それに尽きる感じでした。

肖像画の誕生秘話。

中川さんが江草さんを紹介された際、竜騎士07さんが驚かれたと聞いたのですが。

江草: 元々私が描いていたのは頭身の高い絵だったのですが、会社に入って必要とされる絵はマスコット的なものが多かったんです。「びんちょうタン」(備長炭を萌え擬人化したキャラクター)を描くようになっていたから、余計そちらのイメージが強かったのだと思います。

描き易さはどちらが上ですか?

江草: 描き易いのは「びんちょうタン」ですが、描いていて楽しいのは肖像画です。描いていく中で、油絵のようにつぶして描いて、つぶして描いてといった感覚で作業できるんです。

制作日数はどれくらいですか?

江草: 1日イメージを煮詰めて、あとは方向性の確認をしながら数日で描き上げます。それから、色や表情について竜騎士07先生にご確認頂いて。一度、先生の方でベアトリーチェの方向性が変わったことがあって、「どんな意味にも取れるように少しだけ笑わせて欲しい」と言われました。結果、人間っぽい感じが出ました。

肖像画を描く際、気をつけたことは?

江草:『Ep1』で特に気をつけたのは風景ですね。絵に迫力や不気味さを出したくて。特別決まったものではないんですが、椅子とか色々なものに見えるようにしました。

『Ep2』のスーツ姿については?

江草: これは苦労しました。正直、もう少し打ち合わせをして、もっと理想に近づけたかったという不完全燃焼さが残っているんです。

あの絵はファンの間でも評判でしたが。

中川: 最初は露出が少なかったんです。

江草: そうしたら、もっと扇情的な方が良いと。2枚目、3枚目と描くにつれ、だんだんと「どうすればいいんだ!」ってなりました(笑)。

見せ方に苦労されたんですね。

江草: そうですね。この絵にはどうしても目がいってしまう絶対領域があるし、あと太腿の模様を見せたかったんです。他には背景ですね。個人的に最初とイメージがダブらないほうが良いかな、と思って青色を提案しました。

中川: そうしたら、先生が赤のバージョンも見たいとおっしゃるのでご提出したら、それに決まりかけたんですけど。でも何かエロいと(笑)。

一同: (笑)。

江草: 色々考えた末、最終的には背景をぼかしました。(ベアトリーチェを)椅子に座らせていますが、種類の指定はありませんでした。椅子じゃなくても良かったかもしれません。

ちなみに、先ほどおっしゃられていた不完全燃焼の部分とは?

江草: 雰囲気やイメージをこの服装でもっと荘厳な感じにできたら、と思いました。ニーソックスの絵画って見たことが無いので、自分の中で消化しきれなかった感があります。

仕事における苦労と『うみねこ』の感想

お仕事で苦労されていることは?

中川: 弊社は家庭用ゲームの土俵で制作しておりますが、そこには様々なルールがありまして……。守らなきゃいけないルール内でどうすればものごとをうまく進められるか、解釈や審査を通す方法を考えるのに苦労しています。そのために『ひぐらし』のときは泣く泣くオリジナルと違う表現になった所もあります。ただその際、先生が「筋の通ったルールの中ならしょうがない」と大人の対応をして下さったので、非常にありがたかったです。そういう思もあるのでうちとしては移植の際、「最大限ここまでできる」という所まで、努力させて頂きました。

江草: 私の苦労は慢性的な肩こりや腰痛ですね(笑)。仕事中ずっと座っているので、次第にきつくなってくるんです。『びんちょうタン』の漫画連載が始まってからは、ストーリーの考案などで苦しみました。作業面でも、その頃は今と違ってデジタルの漫画家さんはあまりいませんでした。そのため、アナログの風浦に合わせて作業していたんですが、「絶対デジタルで塗ったほうが速いのに!」と思っていました(笑)。ただアナログだと、スクリーントーンの目が良い具合にぶれたりと、長所もあるんですよ。だから今はクライアントが求めるものに応じて使い分けようと考えています。

プロですね。ところでお2人は、『うみねこ』はどの位プレイされましたか?

中川: 私は『Ep2』までやりましたが、江草はあまりイメージが入りすぎると良くないので、あえてやり込んでいないんです。

江草: ただ竜騎士07先生の文章は、本当に読み易いです。私は読みにくい本だと、1ページも読まないで閉じますから(笑)。

プレイしてみて、感想はいかがですか?

江草: 「こんなに殺しちゃって良いんだ」と思いました(笑)。今後の結びが楽しみです。

中川: 私は『ひぐらし』と違って閉鎖空間が舞台となり、キャラクターの動き方が重要になったので、どうストーリーが展開するんだろうと思いました。結局全滅するんですが(笑)。

結末について、竜騎士07さんからお聞きになっていたりは……?

中川: 「何となくこうなのかな?」というのは知っていますが、深くは知りません。なので1ユーザーとして楽しみたいですね。『Ep2』は、衝撃的ですごく好きなんです。推理を諦めて、ファンタジー派でいいやと思いました……と言うと、怒られそう(笑)。

いや、むしろ喜ばれるのでは(笑)。プレイされて、気になるキャラクターはいましたか?

中川: 私が気になるのは、蔵臼と夏妃です。犯人とかいう意味ではなく、立ち位置的に大人として色々苦労している感じが。

江草: 僕は朱志香が良いです。牙を剥いて来る女の子キャラが好きなんです。

このインタビューを通じて、朱志香のイラストのオファーが来るかもしれないですね。

江草: やるならお婆ちゃん(熊沢)とか、戦人も髪型がすごいので描いてみたい。絵画調にして下さいとか言われたらどうしよう(笑)。

『うみねこ』の移植は難しい?

もし『うみねこ』を家庭用に移植するとしたら、最大の壁は倫理ですか?

中川: よく言われますが、厳しいですね。

顔面損壊とかしていますしね。

中川: そういった描写は後からどうするか考えられますが、実はそれよりも、作品の根底にあるテーマが大事だったりします。

作品のテーマですか?

中川: そうです。具体的に説明すると『ひぐらし』では残酷なシーンがありつつも、根底には「コミュニケーションの大切さ」というテーマが存在しており、これでハードメーカーさんにも納得していただけました。『うみねこ』はまだ途中のため、現状何とも言えないのですが、もし仮に、作品のテーマが殺人を肯定するようなものだと、家庭用ハードでは難しいと思います。ただ、竜騎士07先生にはそんなことは全く意識せず、外野のルールなど関係無く作って頂きたいです。

江草: 私もそう思います。

分かりました。本日は貴意なお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました!

(2008年4月吉日・アルケミスト社内にて)

Alchemist Bios

江草天仁

株式会社アルケミストのCGデザインルーム統括として働く傍ら、漫画家や

キャラクターデザイナーとしても活躍するスーパーマン。代表作に『びんちょ

うタン』『最近タマ校生』を持つ他、『ヴェロキア竜騎兵物語』の挿絵など

も担当している。

中川滋

株式会社アルケミストの取締役兼チーフプロデューサー。小売業の勤務を経て、同社に入社。現在は「ひぐらしのなく頃に 絆」など数多くの作品に携わる。4月に行われたイベント「アルケ祭2008」では、女装で会場を盛り上げるなど、サービス精神旺盛な人物。

Chronicle

うみねこクロニクル

『Ep1』発売雛以来、漫画化やイベント開催など、大きな盛り上がりを見せている『うみねこ』。

ここでは『うみねこ』の歴史とも言うべき、メディア展開などの足跡をたどっていこう。

2007年8月17日『うみねこのなく頃にEpisode 1 Legend of the golden witch」発売
10月24日コミック『うみねこのなく頃に the first case』(宙出版)発売
10月25日コミック『マジキュー4コマうみねこのなく頃に1』(エンターブレイン)発売
11月23日攻読本『うみねこのなく頃にEpisodel真相解明読本』(双葉社)発売
12月22日コミック『少年ガンガンパワード』(スクウェア・エニックス)において、『うみねこのなく頃にEpisode 1: Legend of the golden witch』が連載開始
12月25日コミック『マジキュー4コマうみねこのなく頃に2」(エンターブレイン)発売
コミック『うみねこのなく頃に the second case』(宙出版)発売
12月27日コミック『電撃「マ)王』(アスキー・メディアワークス)において、「魔女狩りの宴」(『うみねこのなく頃に』の考察ページ)が連載開始
12月31日『うみねこのなく頃にEpisode 2 Turn of the golden witch』発売
グッズベアトリーチェTシャツ(コスパ)発売※冬コミにおいて先行販売
グッズ真里亞の魔除けブレスレット(コスパ)発売※冬コミにおいて先行販売
グッズ右代宮家Tシャツ(コスパ)発売※冬コミにおいて先行販売
2008年3月1日コミック:『まんが4コマKINGSぱれっとLite』(一迅社)において、『うみねこびより。~六軒島へようこそ!!~」が連載開始
3月16日イベント・ポワソンルージュ金魚茶屋において、『うみねこのなく頃に』展が開催(23日まで)
3月27日コミック『うみねこのなく頃に the third case』(宙出版)
3月28日グッズ、ブロッコリーより、Lycee ver.07th Expansion 1.0(トレーディングカードゲーム)が発売
6月19日攻読本『うみねこのなく頃にEpisode2真相解明読本』(双葉社)発売
7月18日コミック月刊『Gファンタジー』(スクウェア・エニックス)において、『うみねこのなく頃にEpisode 2: Turn of the golden witch』が連載開始予定
8月16日『うみねこのなく頃にEpisode3(サブタイトル未定)』が発売予定

Umineko Exhibit Report

『うみねこ』展レポート

店内で劇中の雰囲気を満喫

本誌記者がお店に入店したのは『うみねこ』展最終日の16時。本来は見学の終了時間だが、特別に3階に上がり中を見せてもらうと、多くのキャラクターの原画ラフが目に飛び込んできた。描かれているのは本編に登場済みのキャラクターがほとんどだったが、中には「麻音」というキャラクターの原画もあった。しかし彼女は紗音と年齢が近く、被ってしまうため、ボツになったのだという。それから奥を見てみると、なんとそこには、朱志香の部屋にあったソファが……。そこには刑事ドラマで見るような、黄色い立ち入り禁止のテープが張られており、事件があったことを思わせる、凝った演出がされていた。他にも使用人室のキーボックスや夏妃の部屋の一角など、そこはまさに『うみねこ』の舞台(右代宮本邸)そのものだった。

新事実発覚のトークショー

見学終了後、17時から07th Expansionの面々によるトークショーが行われた。会場には、特別に選ばれた15名のファンの方々が来場。男女2人の司会が進行役となり、一問一答を行っていくのだが、ここで竜騎士07氏から衝撃の発言が……。「『Ep2』の密室に関する推理で、ドアの隙間から鍵を入れるというのがありましたが、これはできません。赤文字で描いておけば良かった」—1つの可能性が潰されてしまったわけだが、その後もトークは続き、合間に入る声優さんの朗読ショーには、皆が引き込まれる一幕もあった。その後、ファンによる竜騎士07氏への質問コーナーに。際どい質問を冗談を交えてかわすなど、会場が和やかになる中、縁寿の読み方が「えんじぇ」であることが判明。『ラグナロクオンライン』の魔法「エンジェラス」に由来しているとか。そんな中終了時間が訪れ、ファンの方々は2階へ移動し、お茶会に。すると、突然甲高い叫び声が。何でもデザートのパンナコッタに毒が入っていた(という設定)とのこと。趣向の凝らされた仕掛けに皆満足し、『うみねこ』展は大盛況の内に終了した。

Picture captions

会場に入ると出迎えてくれるベアトリーチェの肖像画。黄金の額に飾られている

P109でも紹介した、肖像画の未使用バージョン。細かい解説文が添えられている

階段を上がった所に置かれていた肖像画の碑文。さり気なく添えられた薔薇がおしゃれ

07th Expansionの面々。メディアの露出が少ないdaiさんに、皆が注目していた

トークショー終了後にふるまわれたパンナコッタ。郷田の料理を再現したもの

ファンの方々にプレゼントされた、「片翼の鷲」が刺繍されたハンカチ。超レア品